不動産ベンチャー、東証1部に続々上場
統計データ|2016年12月12日
12月にはハウスドゥとインベスターズCが市場変更
株式上場後に、短期間で東証1部に市場変更する不動産ベンチャーが出てきた。
12月にはインベスターズクラウド(東京都港区)やハウスドゥ(東京都千代田区)がわずか2年足らずで達成した。
金融緩和を背景に主軸事業を伸ばし、さらなるビジネス拡大を狙う。
収益用アパートの販売・管理を行うインベスターズクラウドは上場から1年4日経過した12月7日、マザーズから1部に変更した。
同社の株価は市場変更前の12月1日に4120円を付けたが、12月9日終値は3595円と3000円台後半の水準に戻した。
2015年12月期の売り上げは215億1200万円だが、16年度は100億円以上伸ばし327億円の予想達成は堅い。
経常利益は18億8400万円から33億9000万円と、売り上げの1割水準を保持している。
古木大咲社長は「アパート販売が好調」と話す。
アパートの受注は昨期の326棟から今期は200棟増の515棟にまで伸びる予定だ。
同社の顧客はサラリーマン家主が中心で平均年収は1000万円と、金融緩和の影響で貸出先を探す銀行の融資が通りやすい層だといえる。
物件価格が高騰する中、新築でも表面利回り7%程度を確保できることもあり、あらたな収入の柱を作りたい新規顧客を獲得している。
同社が短期での市場替えを切望したのは、海外展開を見据えてのことだ。
古木社長は「東証1部のブランドは、大手、特に外資系企業と組むときに大きい」と話す。
来年は東南アジアへの進出も視野に入れる。
不動産フランチャイズを展開するハウスドゥ(東京都千代田区)は8日、マザーズから1部に市場変更した。
1年8カ月での市場変更という速さについて、安藤正弘社長は「マイナス金利によって不動産売買市場が活発になったことが追い風。外部役員の設置から2年という条件がなければ、もっと早く一部に移ることもでき
ただろう」とコメントした。
株価は1部上場決定を発表した11月17日から伸びはじめ12月1日に1492円をつけたが、9日終値は1301円と11月中旬の水準に戻した。
株式公開時期の年間売り上げは、15年6月期に145億7300万円だったが、16年6月期は172億7500万円と約27億円の増収。
経常利益は15年度の5億1300万円から2倍の12億7700万円と躍進した。
同社の市場替えを後押ししたのはフランチャイズ事業だ。
オープン準備中も含め現在406店舗で、2025年に1000店舗を目指す。
売買市場が活発になり、異業種からの新規参入だけでなく、既存の不動産会社が全国チェーンのブランドを持ちたいと、加盟が伸びた。
元野球選手の古田敦也さんをイメージキャラクターに起用し、テレビCMや広告を出したのも奏功した。
現在推進しているのが高齢の自宅所有者に対してリバースモゲージを行う『ハウス・リースバック』だ。
フランチャイズ加盟店が自宅の売却を希望する顧客を見つけハウスドゥに紹介する仕組み。
ハウスドゥは自宅を買い取り、家賃を得る。
居住者が退去後に再販することで収益化するため、契約時点ですぐに利益になるビジネスではないが、空き家がさらに増えていく中で、広がる可能性の高い事業だ。
ファーストロジック(東京都港区)はマザーズ上場からちょうど1年で東証1部の仲間入りをした。
15年7月期の売上高9億1200万円から16年には12億7700万円と4割の増収。
さらに経常利益は4億6000万円から5億6400万円と22%の増益だ。
売り上げに対する経常利益の比率が45%を占める。
「利益率を高められるように社内体制を変えた」と同社は話す。
それぞれ、ビジネスモデルは異なるが不動産市場の好況を追い風に、不動産テックや空き家ビジネスなど今後伸びる分野にも切り込み、成長し続ける会社を目指す。