関西圏はさらに多い可能性も
不動産市場データを提供するタス(東京都中央区)は8月31日、2017年6月期の賃貸住宅市場レポートを発表した。今回は総務省発表の住宅・土地統計調査から、全賃貸住宅ストック(在庫)に占める「経営難等物件」の割合を推定。首都圏の19~30%の賃貸住宅が「経営難等物件データ」となっている可能性があることがわかった。
「経営難等物件データ」とは、資金難などにより管理会社に管理を委託できず、仲介手数料さえ払えない経営状態の家主の賃貸住宅のことを指す。そうなると、不動産会社の顧客ではなくなるので、レインズなどのデータから抜け落ちることとなる。
データが無く、どのように利用されているかが分からない「経営難等物件」を50%と仮定すると、空室ストックの中で61~74%が「経営難等物件データ」に集中している。そのため、一度「経営難等物件データ」になると自力で入居付けしなければならないなど挽回することが難しいのではないかと分析。25年以降は首都圏における世帯数の減少が始まるため、さらに「経営難等物件データ」は増加すると考えられ、いかに長期入居してもらうかが賃貸の安定経営の鍵となるとみている。
なお、タスが独自開発した空室率の指標である空室率TVIは、東京都全域で12.73ポイントであるのに対し、大阪府は8.61ポイントと低い数字が出ている。これについて藤井和之部長は「関西圏は大手不動産会社のデータが中心となっている。そのため、低めの数値が出ていると考えられる。住宅・土地統計調査から空室率を算出すると、大阪府は20.3%、京都府は16.6%、兵庫県は18.5%。関西圏では大手不動産会社のデータに入ってこない『経営難等物件データ』が多く隠れている可能性が高い」と分析した。