現実にそぐわぬ内容に賛否両論
10月27日、賃貸業界でも大きな注目を集めるマンションなどの空き部屋を旅行者に貸し出す「民泊」を認める条例案が、大阪府議会で可決された。民泊を認める条例の成立は全国で初となる。
政府が指定する「国家戦略特区」の規制緩和を活用するもので、早ければ来年4月から、大阪府内の対象となる地域では、一定の条件を満たすことを前提に民泊が解禁される。
大阪観光局の発表では、今年6月の府内のホテルや旅館の稼働率は約83%で、4カ月連続で全国1位を記録。
また、来阪する外国人旅行者数も、昨年の376万人に対し、今年は上半期だけで320万人を突破。
年間目標の380万人を超えるのが確実な状況で、宿泊施設の不足が大きな問題になっている。
民泊解禁はこうした状況を改善する狙いがある。
対象となるのは府内43市町村のうち37市町村。
独自に保健所をもつ大阪市や堺市、茨木市など6つの市は含まれないため、別に条例を整備する必要がある。
今回、ようやく民泊解禁に向けて大きな一歩を踏み出した大阪府だが、評価は大きく分かれている。
新幹線の発着駅JR「新大阪駅」から徒歩10分の場所に、築20年の賃貸マンションを所有するAオーナーは、「外国人旅行者の玄関口である関西国際空港のある泉佐野市や、『新大阪駅』に近い吹田市などでは、ホテル不足解消に一定の効果は期待できるかもしれません。私の物件も20室中3室が空室なので、これを機に民泊にチャレンジしてみようと思います」と、民泊解禁に期待を寄せる。
一方、すでに大阪市内にある賃貸マンションの6室を、旅行者と空き部屋のマッチングサイトAirbnb(エアービアンドビー)を利用して貸し出しているBオーナーは、「ユニバーサルスタジオジャパンや大阪城、通天閣など、外国人に人気のスポットが集中する大阪市が対象外では、あまり大きな効果は期待できないのではないでしょうか」と、否定的な見解を示した。
いくつかある条件の中で最も大きな障壁となると見られるのは、滞在期間を6泊7日以上としている点だろう。
約2年前から、不動産会社からの提案を受けて実験的に民泊を開始したという上野徳之オーナーは、「大阪市内に所有する2棟の賃貸マンションのうち数部屋を民泊用として貸し出しています。今後の規制緩和への大きな第1歩とはいえ、条例化されたことで「1週間以上の滞在」などこれまでグレーとされていた部分を厳守しなければならなくなるのかという不安もあります。私の物件を利用される方の平均滞在日数は3、4泊。もし滞在期間1週間以上を厳守するとなると賃貸住宅として貸し出すより収益が下がってしまいます」と、現実にそぐわない条例の内容に疑問を呈した。
民泊解禁に向けた取り組みとしては、東京都大田区も1月の施行を目指して12月中に条例案を区議会に提出する方針を打ち出している。