賃貸業界でも大きな注目を集めている、マンションや戸建て住宅の空き部屋を旅行客に貸し出す「民泊」。来年1月には東京都大田区で、全国で初めて民泊が解禁されると言われているが、管理会社はどのように考えているのか。本紙が行った緊急アンケートで現場の状況をまとめた。
「『外国人が出入りするようになって不安だ』という連絡を受けました。調べてみると勝手に民泊に使われていたことが分かりました。今いる入居者を大切にしようという方針から、退去してもらいました」。
こう語るのは約1800戸を管理する和敬(京都府京都市)の若林基道氏。賃借人が勝手に民泊に転用した結果、近隣住民からクレームを受けた。
本紙が11月に行った「賃貸管理の現場における『民泊』の実態」と題したアンケート調査で、回答のあった394社のうち、285社は民泊ビジネスへの参入に否定的な見解を示した。
全体の72%にあたり、「民泊をやりたい」(22社)と「検討したい」(87社)を大きく上回る結果になった。
高い収益性や効果的な空室対策として大きな注目を集める民泊ビジネスだが、管理会社の多くは参入に消極的だ。
その理由として
(1)「近隣住民や既存の入居者に迷惑を掛ける恐れがある」
(2)「法律が未整備」
(3)「地域的に需要が見込めない」の3つが挙げられる。
管理会社が最も懸念しているのは、既存入居者のクレームにつながりかねないことだろう。
例えば防犯上の問題だ。
民泊物件には、見知らぬ外国人などが頻繁に出入りする。
一時的な利用に過ぎない宿泊者がオートロックの解除番号を知ることにもなるため、当然、住民は不安を抱く。
騒音でトラブルになるケースも多い。
生活習慣の違いから夜遅くまで騒ぐ旅行者もおり、近隣住民との間でトラブルが発生する。
「スーツケースを引く音がうるさいというクレームが入りました。契約違反ですぐに退去してもらいました」(マルユーハウジング・沖縄県浦添市金城源治郎氏)
「入居者の一人はあまりの騒音で寝つけず、精神不安で会社を欠勤するようになりました」(吉住ホーム・東京都中野区榊原謙介氏)
法整備については現在、一部の地域で「国家戦略特区」の特例を活用し、解禁に向けた取り組みが行われている。
東京都大田区は、来年1月を目途に全国初の民泊解禁を実現すると見られている。
民泊そのものが認められれば参入を検討してみたいとする声は多い。
一方で、民泊ビジネスに積極的な管理会社は、トラブル対策についてどのように考えているのだろうか。
来年以降、民泊事業に参入することを発表したアパマンショップリーシング(東京都中央区)のPM事業本部の大山芳弘副本部長は、「サブリースの運用方法の一つとして、賃貸と民泊で並行募集する予定です。トラブル対策として入居の際に物件の特殊性を説明することや、フロアを別にするなどの方法を考えています」と語る。
東京23区内で民泊事業を手掛けているある管理会社は「当社ではすでに30戸を民泊物件として運用しています。現段階ではトラブルは発生していませんが、何かあればすぐ対応できるように24時間管理を行っています」と事業に対する意気込みを語った。
法整備が進み、適切な運営方法が確立されれば改めて民泊ビジネスに取り組もうとする管理会社が増える可能性は十分にある。今後の動向にも注目したい。