快眠できる住まいの供給を模索
賃貸住宅の付加価値を高めるため、伊藤忠都市開発(東京都港区)がIoTを活用した実証実験を開始したことを6日に発表した。照明や空調、音響機器をシステム制御し、単身入居者に快適な睡眠環境を提供するものだ。家電の遠隔操作ができる賃貸住宅など、IoTを活用した物件の付加価値づくりに取り組んでいる。
伊藤忠都市開発は都内に所有・管理している物件に、パナソニック製品の『おやすみナビ』アプリで照明やエアコン、スピーカーを一括制御するシステムを導入した。設定した起床時間に近づくと徐々に照明が明るくなるなど快適な睡眠をサポートする。1Kで25㎡の単身向け住居でモニターを1年間入居させ、年4回システムの効果や使い勝手などを調査する。入居者が快眠できることが実証されれば、今後『ねむれるーむ』という名称で市場に供給していく考えだ。実験を行う部屋は既存の建物を改装したが、新築での開発も視野に入れる。
伊藤忠都市開発は20~50代の男女200人を対象に睡眠に関するアンケート調査を行ったところ、約7割が睡眠環境を改善したいと答えた。住宅において快眠できる環境が付加価値になると仮説を立て、東京都内にある2棟の自社開発マンション『クレヴィアリグゼ』で1年間の実証実験に乗り出した。
すでに複数の企業が、IoTを導入した住宅を供給している。レオパレス21(東京都中野区)は2016年10月から、遠隔操作ができる家電制御機能を新築物件に標準装備している。初年度は5000戸、次年度以降は年間1万戸を建設する。合わせて、既存物件への後付けも計画しているという。
オンライン上でアパート投資のための土地のマッチングから建築・賃貸管理までを提供するインベスターズクラウド(東京都港区)は、管理物件に家電の遠隔操作が可能になるIoTシステムの導入を進めている。18年12月までに、同社が管理している1万4000戸のうち、1万戸にタブレットとセンサー、窓にセキュリティ機器などを取り付ける計画だ。
17年10月には、独立行政法人都市再生機構(神奈川県横浜市)が中部電力(愛知県名古屋市)らと提携し、賃貸住宅でIoTを用いエアコンを省エネルギー運転する実験を行う。気温予測などに基づきエアコンを制御するもので、入居者の利便性向上に加え、低炭素化住宅の実現を目指すもの。
物件の供給過剰によってますます賃貸住宅の競争力が求められる中、不動産会社はIoT技術を用いて新しい賃貸住宅を創出していく。