全国初のゼロエネルギー賃貸

積水ハウス

その他|2017年07月03日

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普及の課題は建築コスト

積水ハウス(大阪市)は6月26日、国内初となる1棟全戸がネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)基準を満たす賃貸住宅を手掛けると発表した。省エネの賃貸住宅を増やすことは、国が掲げるCO2削減目標から見ても業界課題だが、建築費が割高になるため供給が進んでいない。

積水ハウスが新しいマーケットを開拓するための大きな一歩を踏み出した。8月から消費電力を地産地消できる賃貸住宅を石川県金沢市内で着工する。1棟全てがZEH基準の賃貸住宅は日本初。1LDKが12戸、1Kが1戸の賃貸住戸と店舗1戸の3階建て重量鉄骨造となる。特徴は、発電エネルギーが消費分と同等の水準になることだ。高効率のエアコンやヒートポンプ、LEDなど省エネ設備を満載している。屋根には創エネルギー設備として31.5KWの太陽光発電システムを搭載した。

同社は国の掲げるCO2削減に住宅が重要な役割を担うと考え、省エネ住宅の建設を推進してきた。今回、全体の着工件数の4割を占める賃貸住宅の省エネ普及に着手した。

だが、普及を阻む大きな問題点がある。建築コストだ。太陽光パネルや高断熱建材などへの投資がかさめば、購入者であるオーナーが敬遠しかねない。設備代を回収するために家賃まで割高になれば「入居者まで敬遠する。電気代の削減で(家賃の割高分を)相殺できるということを知ってもらう仕組みが必要になる」と環境推進部長の石田健一常務執行役員は語る。同物件では家賃を5000円程度高めに設定しても、光熱費の削減分で入居者に還元ができると想定する。まずはZEH賃貸を供給し、世間での認知度を上げる。その過程で、ZEH住宅に住むメリットを浸透させていきたい考えだ。

高い断熱性ニーズ

実は、入居者側の省エネ住宅のニーズは高い。リクルート住まいカンパニー(東京都中央区)が2016年5~6月に行った賃貸住宅の入居者への調査では、「改善したい部屋の性能は」という問いに対して、遮音性に続いて2番目に要望が多かったのは断熱性能だった(グラフ参照)。同社の池本洋一SUUMO編集長は「空室対策の観点から設備の取り換えやデザインリフォームなどを提案する傾向があるが、安定した長期入居者の獲得が求められる中、断熱性の高さなど住宅性能の良さは重要になってくる」と話す。

住宅の性能を上げ、住み続けたい賃貸住宅をつくれば「生涯賃貸派」を増やすことにもつながる。建築コストが上がっても、家賃が下がらず安定した入居が実現できるということをオーナーに伝えるため、実際の光熱費の比較や入居者の声などを集め次につなげることが重要だ。
環境問題は、今後賃貸住宅業界全体で取り組んでいくべき課題だろう。

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