川崎市を中心に1500戸を管理する第一ハウジング(神奈川県川崎市)が、段ボールで作った家具の模型を使い、空室解消に結びつけている。
模型設置のアイデアは明治大学理工学部建築学科の園田眞理子教授の研究室との産学連携のなかで生まれたものだ。研究室の学生たちが型紙を作成し、段ボールを加工して管理会社向けに発送する。テレビ、キャビネット、ベッド、テーブルなど現在7種類の図面が用意されている。
第一ハウジングでは昨年9月から長期空室物件に家具模型の設置を始めた。川崎駅から徒歩6分の場所に立つ築20年のRC物件は、3カ月以上空室が続いていたが、模型家具設置後1〜2週間で続々と入居希望者が現れた。もともと、当該物件の立地は良かったものの、9畳の居室スペースに収納がなく、入居付けに苦労していた。
学生たちが行うのは、段ボールの模型を提供することだけではない。「学生たちは該当物件が長期空室となった原因を探り、その問題点を補完するアイデアを導きだします。各物件の問題点は、私たちが仲介現場で感じている居室の課題とほぼ一致するものでした」と加藤豊社長は話す。園田研究室では住宅需要に関する調査を研究テーマの1つとして掲げており、空室となった賃貸住宅が研究対象となる。
学生たちが最も注力するのは入居者ターゲットを捉えるために行う、地域特性や賃料帯などのマーケティングだ。そこで特定した入居者ターゲットに照準を合わせた居室のコンセプトを決め、模型家具と同時に小物などのインテリアについてもアイデアが出される。
加藤社長は、園田研究室の取り組みを全国の管理会社に広めたいと考えている。全国の管理会社と学生たちを結ぶことで、管理会社にとっては空室を解消する有効な手段とし、学生たちの研究活動も支援していこうと考えている。同社では学生たちに1室あたり約3万円の費用を支払っているという。
今後は全国の管理会社に対して学生との産学連携を行う組織への参加を呼びかけていく予定だ。