深夜まで契約書作成
平成30年7月豪雨で災害救助法が適応された自治体では、民間の賃貸住宅を行政が借り上げ被災者に貸す「みなし仮設住宅」の申し込みが進んでいる。最も被害が大きかった岡山県倉敷市では31日までに2135件の入居申し込みを受け付けた。住む場所を失った被災者のために仲介会社は、物件探しや煩雑な契約業務に追われていた。
倉敷市では7月17日からみなし仮設住宅の申し込み受け付けを開始した。被災状況から約4000戸の住宅確保が必要と想定。市内に200戸の仮設住宅を建設するほかに、公営住宅の空室と民間の賃貸住宅を借り上げるみなし仮設住宅で被災者の受け入れを進めている。
みなし仮設住宅に関しては、7月31日時点で2135件の申し込みがあり、1972件の入居決定通知を出している。市の職員によると申し込みを受け付けてから1週間弱かかる。受け付けを開始した7月17日だけで207件、最も多かったのは20日の265件だった。24日を境に申し込み数が減り、25日以降は1日100件以下に落ち着いた。
みなし仮設住宅に入居するためには、該当物件を専用のポータルサイトで検索するか、仲介店舗に電話や訪問で問い合わせ、まず物件を選定する。部屋を決めたら、貸主の承諾書を含めた書類を市町村に提出しなければならない。入居者だけでなく契約をサポートする仲介会社にとっても手続きは煩雑だ。
「通常の賃貸借契約に比べ3倍ほどの手間がかかる」。こう語るのはワイケイ興産(岡山県倉敷市)の栗元浩二社長だ。
みなし仮設住宅の相談窓口に指定されているワイケイ興産は、20日までに約400件の問い合わせを受けた。多いときで1日160件を契約。被災者の希望を聞き、物件を探した。最も手間がかかったのは各自治体が要請する賃貸借契約書の作成だ。一般の賃貸借契約では、同社独自の書式を使用するため、一から作成する必要はない。しかし、自治体、借主、貸主の三者で交わすみなし仮設住宅の契約書は、県が指定したエクセルの用紙に住宅の設備項目を一つずつ入力しなければならない。様式の変更や追記が一切禁じられているため、かなりの手間がかかる。