賃貸住宅向けのリフォーム事業を手がけるニッソウ(東京都世田谷区)は、7月25日に東京証券取引所グロース市場への上場を果たした。同社の強みは、顧客開拓のための営業活動にある。知名度の獲得が重要であると前田社長は語る。
営業活動で知名度確立
ニッソウの2021年度の売上高は20年度比で5.5%増の28億8094万円。17年からの5年間でおおよそ2培になった。
売り上げのアクセルとなっているのは、全体の約65%を占める原状回復工事事業だ。受注件数は21年度で8016件、20年度比は約20%増加した。1件あたりの平均単価は約23万円。
不動産会社から工事を受注、工事専門事業者を選定し、同社が施工監理を行うビジネスモデルだ。
新規顧客毎年200件増
同社の最大の強みは、顧客である不動産会社の多さだ。現在取引があるのは2500社で、17年の1400社から約1.5倍の1000社以上増やした。退去時に発生する原状回復工事は、不動産会社との接点の数だけ受注件数が伸びる。そのため顧客数は売り上げにひもづく重要な指標だという。
前田社長は「注力するのは知名度の向上。日々の営業活動により、この5年間で毎年200~300社の新規顧客を獲得してきた」と話す。
全社員52人のうち、前田社長を含めた4人で広告営業を担当する。電話、ダイレクトメール(DM)、ファクス、雑誌広告、テレビCM、ラジオCMと採用する手法は幅広い。テレビとラジオはブランディングとしての位置づけだ。顧客獲得に直接的に寄与するのが電話やDM、ファクス。この3点は一切外部発注をせず、社内で行う。
「原状回復工事の売上高のうち、90%以上をリピート受託が占める。工事が発生したタイミングで思い出してもらえる種まき活動が大切で、一度接点を持つと継続的な受注を獲得できる」(前田社長)
ターゲットは、地場に根付いた中小規模の不動産会社。東京都の世田谷区、中央区、港区、渋谷区、新宿区といった家賃帯の高いエリアを中心に受注する。
原状回復工事の料金設定は、家賃の金額が上がるにつれ、高くなる。家賃相場が高いエリアで案件を獲得することにより、一定水準の単価を維持し、最終利益率は5%程度となっている。
毎日1000枚のチラシ配布
同社の特徴である顧客開拓活動へのこだわりは、個人事業主からスタートした前田社長の経験が根本にある。もとはアーティストの道を志していた前田社長だが、将来性に不安を抱き挫折を経験。手に職もなければ後ろ盾もない状態で、原状回復工事の仲介業を始めたという。「無名の個人事業主に工事を依頼する会社はない。まずは名前を売ること、それには広告営業しか選択肢がなかった」と振り返る。
夫婦二人三脚で、一日も休まず毎日1000枚の広告チラシを配ったという。少しでも利益がでると、コピー機を購入し、原本となるチラシを作成。それを印刷会社に持ち込み増刷し、チラシ配りをする。このルーティーンをこなす日々だった。「出た利益をすべて広告につぎ込んで、上場までたどり着いた。上場は、個人事業主時代からビジネスの成功を示す指標として目標に掲げてきた」と語る。
今後も、事業規模拡大の方針を掲げる中、人材獲得のためにM&A(合併・買収)も視野に入れたいとした。
22年度の売り上げ目標は31億4547万円。中期経営計画としては、早期に100億円を達成したいと意気込む。(齋藤)
(2022年9月19日20面に掲載)