追加金融緩和で不動産株軒並み高値
統計データ|2014年11月11日
円安で不動産への外資流入進むか
東証REIT指数6年ぶり1800超
10月31日に、日本銀行が発表した、追加金融緩和。
今回の金融緩和は不動産にどのような影響を与えるのか。
週明けの11月4日は、不動産セクターの株が高騰した。
三井不動産は金融緩和発表前よりも500円以上の急伸。
3810円の年初来高値を付けた。
大東建託は、発表前より2000円以上高い1万5485円となり、11月6日は1万4000円周辺を持続している。
今回のポイントの一つ目は、現金通貨と日銀の当座預金を合計したマネタリーベースの増加額を60兆~70兆円から約80兆円に拡大すること。
民間金融機関の貸出余力が高まる。
不動産に対する融資は金利安が続いていたため、今後は金利が上がるのではないかという懸念があった。
だが、今回の金融緩和により、もうしばらくは、低金利が継続するという予想が立つようになった。
個人による不動産投資は加速するのだろうか。
一般財団法人日本不動産研究所(東京都港区)の吉野薫氏はこう語る。
「個人投資家に対する金融機関の貸出金額に大きな変化はないのではと考えている。金融機関の融資規律がリーマン・ショック前のように緩んでいるわけではない。返せる人に貸すという点で一貫している。そのため、貸出額が急に増加するとは考えにくい」
ポイントの二つ目として、J-REITの買い入れペースを3倍の900億円にしたことが挙げられる。
東証REIT指数は、11月4日、1806・97をつけ、6年ぶりに、リーマン・ショック前につけた1800を超えた。
REITに詳しいアイビ―総研(東京都港区)の関大介社長は「昨年4月の金融緩和時と比較すると、今回のJ―REIT買い入れ額はまさに異次元」と語る。
「注目したいのは、日銀が買い入れ期間をいつまでと決めていないこと。インフレターゲット2%を達成するまで、900億円ペースが継続すると考えられ、REITの価格を後押しする」(関社長)
関社長によると、REITは、分配金利回りが下がっており、個人投資家にとっては、長期保有による分配金利回り獲得よりも、銘柄の値動きで利益確定売りを行う短期サイドの取引になってくると語る。
REITの運用会社側は、増資し、物件数を増やしたいところだが、すでに、不動産価格が上昇。
ファンドなどによる購入も活発化し、物件取得が難しい状況になるだろうと予測する。
REITの分散投資が進むのではと考えるのは吉野薫氏だ。
「日銀の買い入れによって、投資口価格が上がりやすい状態になる。運用会社としては、分配金利回り確保が必要になってくる。そのため、東京以外の都市の不動産の取得に動くのでは」
今回の追加金融緩和は、消費税8%引き上げの穴埋め効果にしかならないと主張するのが、ドイツ証券(東京都千代田区)株式調査部の大谷洋司シニアアナリストだ。
実物不動産は、不動産株から1年間遅れながら、連動しているという。
今年は不動産セクターの株が15%下がっており、追加金融緩和発表後も、11月4日に上がった不動産株は、6日には下がっている。
つまり、来年は不動産価格が下がる可能性が高い。
不動産価格は今年をピークに、値下がりするだろうと大谷氏は語る。
「もし、消費税が8%から10%に上がれば、不動産にとってもマイナス効果。実質賃金の上昇など、実体経済を良くすることが先決」(大谷氏)
日銀が執着する2%のインフレが実現することにより、不動産価格や賃料への影響はどうなるだろうか。
吉野薫氏は「インフレになったからといって、マクロで賃料が上がるとは思わない。住宅の物件価格に関しては、天井に近い。2011年、2012年の不況時に、賃料が下がらなかったのが、レジデンス。また、オフィスや商業施設に比べ、入居者が移動しやすいため、家主が賃料増額を提案したときに、住み替えを選びやすい。むしろ、個々の物件のブランド化などによる、賃料上昇などのほうが見込みがあるのでは」。