通常損耗と経年劣化は現状回復義務に含まれない
120年ぶりになる民法の大幅改正で敷金や原状回復の規定が明文化される。
法務省の諮問機関である法制審議会は、民法の債権や契約の分野に関する改正要綱を決定し、2月24日、上川陽子法務大臣に答申した。
1896(明治29)年の民法制定以来、大幅な見直しは行われておらず、120年ぶりの抜本的改正になる。
法務省は3月末に同改正案を国会に提出し、早ければ今国会中、もしくは臨時国会で成立する見込みだ。
成立後は2年間の猶予期間を経て平成29年から施行される見通し。
要綱の改正項目は約200項目に及ぶ。
賃貸借契約に関しては、現状では敷金の定義はなかったが、「いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」と定義。また、契約終了後、敷金は原則として借り主に返還する旨の内容を新たに加えている。
原状回復では、借り主は通常使用の損耗と経年変化の原状回復義務を負わないとし、それ以外では、原状に復する義務を負うとしている。
今回の改正は賃貸業界にどのように影響してくるのか。
たとえば、クリーニング費用を入居者に負担してもらう行為が民法違反と言われる場合などが想定される。
こうしたケースに関して、江口正夫弁護士によると、「今回の新たな規定は強行規定ではなく任意規定になるため、契約書の特約にクリーニング費の負担について記載があり、消費者契約法に違反していていない限り、特約が優先されると言うことができる」と言う。