ヴィンテージ感演出したリノベ
「地域全体のことを考えた物件づくりに重きを置いています」。
自社で所有する昭和54年築のマンション一室をリノベーションした岩崎興業地所/鈴元(神奈川県横浜市)岩崎祐一郎氏はこう話す。
RC造4階建ての最上階、411号室を、住民の退去に合わせて2Kからワンルームに改装した。
専有面積は43.83㎡と単身者には広めのスペースだが、相場賃料で募集したところ、約一週間でデザイナーの20代単身男性が成約した。
「内装もさることながら、建物の外観や街の雰囲気も気に入った」ことが成約理由だったという。
同マンションは、2014年に大規模修繕を実施している。
長年の風雨で表面保護材が剥離したブリックタイルを一枚一枚サンダーで磨き、外観は元の鮮やかさを取り戻した。
塗装でごまかさなかったのは、「建物が持つ歴史や愛着を継承するため」(岩崎氏)だ。
植栽を整えたことで景観もよくなり、近隣住民や既存入居者からは「街が変わった」「友人を呼びたくなる」などの反応があった。
今回の内装リノベーションは外観に合わせヴィンテージ感を演出した。間柱をあえて残し、設備もそのままにしている。
既存物件の活用が問われる昨今、「内装どうこうだけではない」というのが岩崎氏の考えだ。
街と調和する外観と、それに合わせた内装づくりを心得れば、その街を好きになってくれる住民が自然と集まる。
次は、その住民自身が街の魅力の発信者となり、人を呼ぶ。
これが、リノベーションが生む真の付加価値かもしれない。