不動産への影響は当面見込めず
統計データ|2016年02月22日
さらなる金利引き下げに期待
2月16日、日本銀行による国内初のマイナス金利が始まった。
異例ともいえる金融緩和策の影響で、一部の金融機関では住宅ローンや預金の金利引き下げを実施する動きを見せる一方で、円相場と株価の乱降下など、思惑と逆の事態を引き起こしている。
今後の不動産市場にはどのような影響がでる可能性があるのか。
「マイナス金利は、住宅業界にとってはプラス要因だが、どれだけ好影響がでるかは未知数だ」。
こう語るのは、住宅系REITに詳しいアイビー総研(東京都港区)の関大介社長だ。
マイナス金利とは、金融機関(銀行)が日銀に資金を預ける際の金利をマイナスにするもの。
預けるよりも、企業や家計に融資する方が有利にすることで、積極的な融資を促す。
市場を活性化するのが狙いだ。
2013年4月4日に行われた量的緩和は、株や不動産への投資、金融機関の積極的な融資、投資の手控えを防止するなどの効果が期待されていた。
ここ3年で株価が2倍に上昇したのに加え、不動産価格も都市部に限れば年間十数%のアップするなど、目に見える効果は確かにあった。
しかし、融資や物価上昇率にははっきりとした効果は上がっていないのが実情のようだ。
ただ、一般社団法人日本不動産研究所(東京都港区)の研究部・吉野薫研究員は「経済を取り巻く雰囲気が、以前よりも明るくなってきていることは確か」だと語る。
景気回復への歩みはさほど悲観的にある必要はなさそうだ。
住宅業界にとっては、住宅ローン金利が下がり、以前にもまして投資しやすくなった。
関社長も「すでに購入している人が買い増すには追い風」と指摘する。
実績がある人に、銀行が貸し出すハードルも低いからだ。
しかし、融資条件は有利になるものの、実際に新規購入者や買い増しなどの需要が増加するかは不透明だという。
「銀行は融資を増やしたいとはいえ、見境なく誰にでも貸し出すわけではない。新規の需要が出てきたとしても、リスクの高い投資未経験者に融資するとは考えにくい」(関社長)
不動産価格は高騰しているため、今購入できる人はある程度の資産を持っている人に限られる。
初めて投資する人が格段に増えるといったことはなさそうだ。
賃貸住宅市場ではどうか。
吉野研究員は「需要、供給ともに良い影響が出るとは考えにくい」という。
需要は、人口動態や都市の成長性と密接に関わっているため、金利の変動が直接関連するわけではないからだ。
供給は、すでに昨年から増えている不動産向け融資や個人オーナー向けのアパートローンが下支えしているため、増加はあまり期待できなさそうだ。
不動産価格が高騰し、ローンを組めない非正規社員の増加などを背景に、不動産に投資をしたい、という需要自体が減少している今日。
日銀はさらなる金利引き上げも検討していることから、今後の動向に期待したい。