地震損壊の修繕費を請求するケースも
東日本大震災の被災地で退去時の原状回復費用を巡るトラブルが急増していることが、消費生活センターへの取材でわかった。
被災者が仮設住宅の代わりに民間賃貸住宅に住む、いわゆる「みなし仮設」に関する相談がほとんど。
仙台市消費生活センターによると、2015年の一年間で寄せられた退去時の請求に関する相談は14件に上っており、14年時の約5倍に増えている。
相談の中には不適切な請求と思われるものもあった。
相談されたもので最も高額だった請求は60万円。
震災で大規模半壊と認定されたマンションにみなし仮設として入居した住民からの相談で、請求の中には震災によって損壊した建物の修繕費用も含まれていたという。
仙台市消費者生活センターは「原状回復費はあくまで入居者の過失による床や壁の傷などの修繕費用なので、入居前に震災で受けた被害の修繕費用は入居者に請求できるものではない」とし、弁護士など専門家への相談を呼びかけた。
トラブル急増の理由は、みなし仮設の退去者数が増えていることだ。
震災から5年がたち、仙台市内ではみなし仮設から退去する入居者が増加。
2012~14年度までは毎年1300人ほどが退去していたが、15年度は2474人へと急増した。
センターの担当者は「契約当初は入居期間を2年と想定していたが、復興の遅れから長引く人が多い。これにより原状回復費用も高額化し、相談に来る人が増えているのではないか」と話している。
みなし仮設の賃貸借契約は家主、県、入居者の3者で結んでいる。
退去時の原状回復費用については、県が家賃2カ月分相当を支払った上で物件を借り上げ、入居者である被災者へと貸し出す。
入居者が故意や過失で居室を損傷させた場合の修繕費の超過分については、入居者が負担するのが慣例になっているという。
退去時の原状回復費を巡るトラブルが増加していることに対し、宮城県震災援護室は「入居者と家主が直接やりとりしているため、詳細を把握していない」としている。