民泊新法 飛び交う思惑
法律・制度改正|2016年11月22日
来年通常国会での審議が見込まれている民泊新法を巡り、関係者らの思惑が交錯している。
14日には京都市が厚労省へ、16日には賃貸の業界団体が自民党へと、新法への要望を提出した。
2者の内容は促進と規制で大きく意見がわかれており、業界団体は助成制度を新設することで促進を訴え、京都市は規制強化を叫ぶ形となった。
新市場開放への期待と不安が入り混じる中、新法の詳細はいまだ固まっていない。
【京都市】集合住宅では原則禁止に
京都市の門川大作市長は14日、来年初頭での制定を目指して調整が進められる民泊新法についての要望書を、塩崎恭久厚生労働大臣へと提出した。
地域ごとに独自の規制を設けられるようにするほか、違法な民泊営業に対して自治体に立ち入り調査権を付与するなど、取り締まり体制の確立を訴えた。
規制の具体案として、京都市内では集合住宅での一室を民泊に転用することを禁止したい考えを示した。
市内の民泊物件は京町屋の一棟貸しや戸建て空き家を宿泊施設に改装するなどの手段に限定し、地域住民に配慮した安全な民泊運営を行うべきとした。
また、市内で違法な民泊運営者が増加している状況を受け、違法物件を仲介サイトに掲載できないようにする案も示した。
違法な営業が疑われる施設に対しては自治体が立ち入り調査できるよう権限を付与し、営業停止命令を下せるようにすべきと主張するなど、京都市の要望は規制強化を強く求める内容となった。
【業界団体】助成制度で参入促進を
こうした動きの一方で、全国賃貸住宅経営者政治連盟(東京都中央区)が16日に自民党に提出した新法への要望は、空き室や空き家の民泊転用を促進するための内容が目立った。
工事費などを助成する制度の新設をするほか、旅館業法の簡易宿所として新たに集合住宅の一室を対象とした枠組みを設けることで、遊休物件の活用を促すことを目指す。
新法の制定を巡っては、今年6月に規制改革実施計画で、民泊を家主居住型と不在型に分類するほか、管理者と仲介事業者を登録制にするなどといった制度の大枠が閣議決定された。
だが、その後、地方自治体などの調査によって、全国で違法に民泊を運営する者が急増していることや、近隣住民と外国人宿泊客とのトラブルが多発していることが判明しており、家主不在型の物件管理における対策が急がれている。
注目される営業日数の上限についても、『年間180日』という規定を掲げる一方で、具体的な定義は決まらないままだ。
16日に開かれた自民党賃貸住宅対策議員連盟の総会で国土交通省が「宿泊日の数か、営業日の数か、関係各省と調整している最中」とコメントしており、新法の内容が明らかにならないままに終わった。
「観光の公害化」恐れる
京都市 門川大作市長(65)
違法民泊の増加で周辺住民とのトラブルが急増している。
また、賃貸住宅を民泊に転用するために、既存入居者との契約更新に応じず追い出し行為を行うオーナーもいる。
このままでは、民泊によって地域の安心・安全が損なわれ、観光公害化してしまう恐れがある。
経済効果のみではなく、地域の実情にあわせるのが大切だ。
たとえば、京都観光した訪日客が隣県に泊まれば、双方が活性する。
一律に全面解禁するのではなく、地域の考え方に応じた柔軟な対応を求める。
民泊に反対というわけではないが、民泊新法にはシェアリングエコノミーによる経済活性や地域住民の生活への影響など、さまざまな変化が考えられる。
そうした意味で、市民の安心・安全な生活を維持できる民泊新法を望んでいる。