家主の会が被災者向けに物件紹介
九州北部での豪雨による被害で、避難所での生活を余儀なくされる被災者に対し、民間の賃貸住宅の空室を活用するみなし仮設の受け付けが始まった。民間では、駅前不動産(福岡県久留米市)や九州大家の会が賃貸住宅を無償提供する動きも出てきた。
5日からの豪雨により、福岡県朝倉市では住宅被害が全壊72件を含め118件出ており、避難所10カ所に419世帯868人が避難する。大分県日田市の住宅被害は全壊12件を入れ217件以上となり、91世帯189人が避難所7カ所で過ごす。日田市では、市営・県営住宅を被災者向けに提供。第1次の募集では10戸に対し31世帯からの応募があった。9日から第2次の募集を開始し、約30戸用意し、29人の申し込みが入っている。1次募集の入居は始まったが、13日時点で4戸のみと進んでいない。「4階や5階部分だったため高齢者が入るのをあきらめた。ペットが飼えないのでキャンセルになったなどミスマッチが出てきている」(日田市)
みなし仮設の提供は豪雨から1週間たち、やっと始まったばかりだ。朝倉市では、(公社)福岡県宅地建物取引業協会(以下、福岡宅建協会:福岡市)が県との協定により、みなし仮設の受け付けを12日から行い、70人が市役所で申し込んだ。13日は午前中までに15人が来ていたという。福岡宅建協会のサイト上でみなし仮設の物件情報を500件近く掲載している。日田市は、(一社)大分県宅建協会(大分市)との提携により367件の空室情報が集まっており、受け付けは14日から開始した。入居期間は最長2年間としている。
問題は、みなし仮設の入居対象になるのが、住宅が全壊になったケースのみである点だ。一部損壊や床上浸水で家に住めない状況でもみなし仮設には入居できない。
そのため、不動産会社と家主の会が支援に乗り出した。駅前不動産は、自社保有と管理物件合わせ9物件22戸を仲介手数料・入居時費用無料、家賃を最大半年間負担なしにする。九州大家の会も福岡市内の4物件6戸の提供を決めた。メールマガジンで会員に向け空室の提供を呼び掛けている。駅前不動産と提携し、窓口は駅前不動産に統一。家主は半年間、家賃収入なしで被災者を受け入れる。対象の物件には、駅前不動産が家具・家電を無料で設置し、原状回復費用も同社が負担する。
駅前不動産の嶋田聖社長は「熊本地震の時に、仲介手数料を無料にして被災者に空室を提供するだけでは問題解決にならないと感じた。トラブルがあっても全てオーナーに負担がかかる。すぐに住めるよう家具なども提供し、トラブルにも当社が対応することで物件数も確保できる」と話す。
九州大家の会の小場三代代表は「みなし仮設は住宅が全壊や半壊でないと受け付けない。制度のすきまで住宅に戻れない人たちに何かできればと考えた。駅前不動産と事前に役割を決めたことでオーナーにリスクを押し付けない点が大きい」と語った。