地場建設会社に補助制度の認知進まず
環境省は2日、省エネ性能を備えた賃貸住宅の建築・改修に補助金を割り当てる「賃貸住宅における省CO2促進モデル事業」の二次公募を開始した。2016年度から延べ1170棟ほどが採択されているが、その大半が大手ハウスメーカーの新築案件であり、地場建設会社の利用は一部にとどまる。断熱性に優れ光熱費を軽減できる住宅は入居者ニーズが高い。空室率悪化が懸念される今、周辺の賃貸住宅と差別化するために一層の制度活用が期待されている。
「地場建設会社に関心を持ってもらえない」。一般社団法人低炭素社会創出促進協会(東京都港区)の担当者は頭を抱えていた。同協会は環境省から委託を受け、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の「賃貸住宅における省CO2促進モデル事業」を執行している。同事業は一定の環境性能を満たす賃貸住宅を新築・改築する場合に、追加的に必要となる高効率な給湯、空調、照明、住宅設備等の導入にかかる経費の一部を補助するもの。
16年は約400件が採択され9割が大手ハウスメーカーで、中小の建設会社の案件は1割程度だった。18年に入っても、170件のうち中小は2~3割にとどまっている状況だという。特に断熱性能の高さが求められる沖縄や東北、北海道などの案件はほとんどない。
積水ハウス(大阪市)では、同補助金を積極的に活用している。前述の補助制度のみならず、18年度から始まった「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化による集合住宅における低炭素化促進事業」ですでに数十棟を申請済み。「建設費は多少高くなるが、環境によく入居者ニーズが高い優位性をオーナーも理解している」と担当者は説明した。実際に相場より数千円高い家賃でも入居が決まるという。
断熱性能の需要の高さについては、リクルート住まいカンパニー(東京都中央区)が16年5~6月にかけて実施した調査結果からも確認できる。改善したい部屋の性能として「断熱性」を望む声が「遮音性」に次ぎ2番目に多かった。また、長期入居に効果がある住宅設備として10位以内に二重サッシや断熱・遮音性能の高い窓などがランクインしている。
池本洋一SUUMO編集長は「性能のいい持家や分譲マンションで育ってきた10代後半から20代前半の世代の若者に顕著だ」という。賃貸住宅で一人暮らしを始めたときに、住環境の悪さに不満を抱えやすい傾向が高いという。背景には、2000年に住宅性能表示制度が施行された影響で、新築分譲マンションを中心に住環境性能の品質が保たれた建物の普及が進んだことが起因しているといわれている。