7月26・27日に「東京ビッグサイト」にて開催する「賃貸住宅フェア2022」で、主催者企画「『住みたい部屋』を演出! 入居を後押しするホームステージングブース」を実施予定だ。入居後の生活をイメージさせ、住みたくなる部屋を演出できるホームステージングという手法について、各社が提供しているサービスを紹介する。
「効果がある」の回答が88%
暮らし方の提案で入居促進
入居者から選ばれにくい物件の空室対策・入居促進策の一つとして、ホームステージングという手法がある。空室にテーブルやベッドなどを設置することで、家具を置いたときの部屋の広さやその部屋での生活をイメージさせることが目的だ。
空室に実物の家具を置くだけでなく、物件写真に家具の画像を擬似的に配置して行う「バーチャルホームステージング」という方法もある。ポータルサイトなどで部屋探しをする人の目に留まりやすい物件写真を掲載することで、問い合わせや内見数を増やすことができる。
ホームステージングの普及活動を行う一般社団法人日本ホームステージング協会(東京都江東区)では「ホームステージング白書2021」として実態調査の結果をまとめている。同協会に所属する不動産会社など221社の回答を基に集計。ホームステージングを実施して、「非常に効果があった」「少し効果があった」と答えた賃貸不動産事業者は全体の88%に上る。また、ホームステージング事業者の回答が20年度より増えていることからも、需要の増加が推察できる。
同協会の杉之原冨士子代表理事は「ホームステージングは単なる空室対策ではなく、入居希望者への『暮らし方の提案』となる。理想的な暮らしができる部屋をつくり、物件価値を高める手法として普及を進めていきたい」と話す。
売買事業の経験活用 入居者属性を基に提案
カグカス(大阪府豊中市)は、16年よりホームステージングサービス「ReFocus(リフォーカス)」を提供している。
インテリアコーディネーターが間取り図や物件写真を基にプランを提案。同社が所有する家具やインテリアを部屋に搬入・設置し、撤去まで手がけるサービスだ。ワンルームの場合、月額利用料は3万3000円、1LDKは月額5万5000円(いずれも税込み)。配送費と撤収費用は別途料金となる。
ホームステージングの効果を最大限発揮するために、インテリアコーディネーターの教育に力を入れているのも特徴だ。担当者は、一人立ちするまでに50~100件の案件に同行する。内見率や成約率を高められるコーディネートについて実地経験を多く積み、学習できる環境を整備している。
同社は実需不動産売買仲介会社から独立した。ホームステージング事業が賃貸業界より盛んな売買市場では、実際の暮らしをイメージできることが成約の条件となる。売買事業で培った入居者へのヒアリングによる知識や経験から、ライフスタイルの傾向や入居者属性を基に賃貸物件にも事業を展開している。21年10月からは、元々展開していた近畿エリアだけでなく、首都圏でも事業を開始。毎月70~80件ほどのホームステージングを手がける。
金保智也社長は「入居者の生の声を聞いてきたからこそ、物件の特徴に合わせながら入居者ニーズを満たすホームステージングを行える。今後はよりよい物件を提供したいと考える不動産会社とともにサービスを展開していきたい」と話す。
賃貸仲介管理事業を行うハウジングロビー(長崎市)は、ホームステージング向け簡易家具「モデルーム」を18年から販売している。同商品はプラスチック製段ボールの組み立て式家具であり、観葉植物や照明などのインテリアを用いて物件を演出する。5月末時点での累計販売セット数は220セット。
一般的な家具より軽く、容易に搬入・設置ができる点が強みだ。通常、家具を搬入するときは大型トラックが必要だが、不動産会社やオーナーにはコスト面など負担が大きい。重さは一つのケースにつき2.6kg、大きさは高さ64cm、長さ87cm、幅8cmからとなり、軽自動車でも搬入が可能だ。ダイニングテーブルやチェア、収納、ベッドなど、用途別にケースを分けて保管する。使用しないときは解体して保管するため、広い保管場所も不要。日焼けせず防水性を備えており、使い回しができることも利点の一つだ。
販売セットはワンルーム・1K向けのシングルセットと2LDK以上の部屋向けのファミリーセットの2種類。ダイニングテーブルセットやテレビボード、ベッドなどをそろえる。価格はシングルセットが3万8940円、ファミリーセットが5万5880円(いずれも税込み)。カラーはホワイトのみとなる。
管理部の野方航氏は「一般社団法人全国賃貸管理ビジネス協会(東京都中央区)の支部会などを中心に22年にプロモーションを行った結果、繁忙期だけで例年と同じ約40セットを販売することができた。今後もオーナー・不動産会社へ商品をアピールしていきたい」と語る。
(2022年6月20日8面に掲載)