「日本一『料理の味どう?』と聞いている管理会社です」。東郊住宅社(神奈川県相模原市)の池田峰社長がこう話すのは、同社が管理物件の入居者専用食堂を運営している管理会社だからだ。単身者が6割を占める同社では「食」で差別化を図ることによって、管理受託する1600戸の入居率は98.5%(2017年3月末時点)と高い。今回はユニークな発想を持つ池田社長に同社の事業展開について語ってもらった。
料理通じて入居者とコミュニケーション
亀岡 名刺が正方形なんですね。
池田 はい、名刺のデザインは当社の管理物件に設置している看板と同じものなのです。デザインで当社のことを認識していただこうと思って作りました。
亀岡 ユニークですね。管理戸数はどのくらいですか。
池田 神奈川県相模原市の淵野辺というエリアを中心に1600戸ほど管理しています。
亀岡 今、100万戸の賃貸住宅を管理する会社が出てきている中で、その数は弱いですね。
池田 当社では入居者専用食堂を運営しており、管理物件の入居者の満足度を上げることで、2000戸規模にまで拡大したいと考えています。
亀岡 入居者専用の食堂なんてもうからないでしょう。
池田 はい、食堂で利益をつくることは正直考えていません。
亀岡 食堂では売り上げもたかが知れています。それではなぜ、始めたのですか。
池田 管理会社として入居者と交流する機会をつくりたかったからです。普段、入居者と会話するのは鍵をなくしたとか、設備に不具合が発生したとか、何かトラブルが起きたときです。もう少し入居者とコミュニケーションを図ることができれば管理会社としての差別化も図れるのではないかと考えたのがきっかけです。
東郊住宅社
池田 峰 社長
1973年(昭和48年)神奈川県相模原市生まれ。アメリカの大学を卒業後、帰国してグラフィックデザイナーとして就職。その後、10年間広告代理店に勤務し、ニュージーランド移住など経て、2012年8月父・信氏が創業した東郊住宅社に入社。自身のアイデアで15年12月に入居者専用食堂「トーコーキッチン」を開店。17年8月に代表取締役就任。
- 東郊住宅社
- 本社所在地 : 神奈川県相模原市中央区共和1―3―43
- 設立 : 1976年2月 社員数 : 10人人 資本金 : 700万円円
- 事業内容 : 賃貸アパート・マンションの管理サービス・仲介、管理物件の清掃業務、入居者専用食堂「トーコーキッチン」運営
経済評論家 亀岡 大郎 氏
大正15年京城生まれ。新大阪新聞経済部長を経て、経済評論家となる。文藝春秋、サンデー毎日など一流紙で、経済・財界問題を中心に、精力的な活動を続ける一方で「自動車戦争」「ゲリラ商法」「IBMの人事管理」などベストセラー多数。