家賃補助実施15件にとどまる

改正住宅セーフティネット法の施行から10カ月がたつ。登録件数は9日現在、初年度の目標2万5000戸よりもはるかに少ない3147戸だ。さらに同制度のうち、住宅確保要配慮者のみに入居を限定した専用住宅の家賃補助の申請受理数はわずか15件であることが本紙の独自調査で明らかになった。国と自治体の足並みがそろわず都道府県の約6割は「家賃補助の実施は未定」と回答した。家主からは「補助が出ると聞いていたから登録したのに話が違う」と非難の声が上がる。


本紙は47都道府県20政令指定都市に対し、一斉調査を行った。家賃補助制度があると答えたのは6都県にとどまった。政令指定都市では名古屋市のみ。実際に家賃補助の申請を受理しているのは、対象になる513件のうち、15件のみ。その15件全てが人口4万3500人の静岡県長泉町だった。制度開始早々、平成29年度の補正予算として組み込んだことで実施につながった。
長泉町以外に補助制度があるのは、宮城県の大崎市、山形県の鶴岡市・南陽市・白鷹町、東京都、兵庫県、鳥取県だ。ただ、登録件数自体が少ないことや、予算化しても制度の構築までに時間がかかることから申請受理までには至っていない。
国は家賃補助の構築を各自治体に委ねているのが現状だ。一方、自治体も腰が重い。財政が厳しい中で、都道府県が補助の一部負担を引き受けるかどうかを見る必要があるからだ。補助額のうち半分は国が負担するが、残りについては、市区町村と都道府県が折半するのか、市区町村のみで負担するかにより、捻出する予算額も変わってくる。
複数の県の担当者からは「各市区町村に任せている」との声が上がる。の発言からは予算確保は市区町村が行うべきとの姿勢が垣間見える。長崎県雲仙市の担当者は「平成30年度の予算に計上していたが、県の補助が確保できず、いまだ制度が整っていない」と話しており、県と市町村の足並みはそろわない。国土交通省の担当者は「都道府県に対して家賃補助制度については呼び掛けている。ただ、家賃補助の実施状況の公表は一定以上の登録が増えてから行っていく」とコメントした。
セーフティネット住宅の登録自体も伸び悩む。10日からは登録手続きの煩雑さを解消するために、申請時の提出資料を減らす対応を始めた。
家主からは「話が違う」と非難の声が上がる。群馬県で1棟全16戸を専用住宅として登録した家主は「国のガイドブックでは、専用住宅であれば家賃補助が行われるのが当然かのように説明されていた。だが、群馬県に問い合わせると補助制度はなかった。国は自治体によって補助の有無をきちんと伝えるべきだ」と憤る。既存の賃料設定のままで住宅確保要配慮者の入居を促進できると期待していた家主にとって、家賃補助実施までの道のりはまだ遠い。
セーフティネット住宅の入居あっせんにも課題が残る。制度上では、セーフティネット住宅の入居あっせんをサポートするのが、自治体や社会福祉協議会、不動産団体らから構成される居住支援協議会と居住支援法人だ。それぞれ71団体、120超の団体が認定されている。
高齢者向け見守りサービスを提供するホームネット(東京都新宿区)は都道府県で居住支援法人に認定されるが、入居あっせんの難しさを感じている。
同社の場合、自治体の福祉課や住宅課で相談窓口の連絡先を記載したチラシを配布してもらい、部屋探しの問い合わせに対応する。ヒアリングの内容を踏まえた上で、協力不動産会社を紹介し、契約自体は不動産会社が行う。部屋探しに関係する問い合わせは、17年末に認定を受けて以来6件、契約件数は2件しかない。居住支援サービス事業部の種田聖課長は問い合わせが少ない理由の一つに、制度を理解していない自治体が多いことを挙げる。同社が認定を受けていない県については、「まだ居住支援法人の申請用紙が出来上がっていない」という回答だった。住宅あっせんの実務に携わらない自治体は、住宅確保要配慮者の部屋探しの難しさの実態を知らない。だからこそ、不動産会社があっせんを担うよう制度の認知を高め、同時に事業としても成立できるような仕組みが必要だ。
「不動産会社の存在抜きでは制度は浸透していかない。入居あっせんについては、不動産会社が住宅確保要配慮者に部屋を仲介した際には国が補助するなどしてメリットを出していかないと、登録やあっせん数は伸びないだろう」(種田課長)

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