カスタマイズ賃貸に活路

入居者が内装のデザインなどを選べるカスタマイズ賃貸は広がるか。大東建託(東京都港区)は23日から、同社初となるカスタムオーダー式戸建て賃貸の入居者募集を開始した。新築で間取りや住宅設備のプランを入居者が選択できる。NENGO(ネンゴ:神奈川県川崎市)は築古物件でセミオーダー賃貸を実施する。空室が増える中、入居者が好みの住宅をつくれることで差別化につなげる。

大東建託のカスタムオーダー式戸建て賃貸の商品名は『cocoDaTe(ココダテ)』。ターゲットは30~40代のファミリーで、「我が家と呼びたい賃貸住宅」がキャッチコピーだ。持ち家派を一生賃貸派に取り込むのが狙い。販売に先立ち試験運用として、千葉県柏市に同社が土地を取得。2戸を建設し自社で運用していく。JR常磐線「柏」駅からバスで14分、バス停から4分の立地。専有面積は約132㎡、駐車場は2台分設置した。

入居募集開始から2カ月間は、間取りと外装、住宅設備のグレード、アクセントクロスを入居者が選べる。間取りは5タイプ用意。1階に土間があるタイプや、2階にリビングを配置し窓を開ければバルコニーと一体にして使えるタイプ、子どもが多い家族向けに2階に4室あるタイプなど、入居者のライフスタイルに合わせられる。住宅設備は3段階あり、グレードが高くなるとその分家賃に反映される。家賃は15万3000~18万1000円と、入居者の選ぶオプションにより3万円弱の幅が出ることになる。

賃貸住宅でも入居者が自分好みのプランニングができることで、長期入居につなげていく。加えて、一定期間住み続けることで家賃が減る設定にした。柏の案件では5年ごとに月額家賃を5000円減額。長期入居のメリットを出していく。

プロジェクトリーダーの高橋由崇次長は「既存の戸建て賃貸は、実需からの転用以外については、収益物件として建てた案件が中心で70~80㎡の広さしかない。今回は130㎡の広さがあり、住宅性能も高く、戸建てで隣接住戸に気を使わなくてもいいという持ち家並みの条件を備えた。新たな賃貸住宅のニーズを掘り起こしていく」と話した。建物の躯体部分は家主の所有、内部の住宅設備や内装の部分は大東建託の所有とすることで、プランニングの自由度を持たせた。躯体と内装の所有権者が異なる仕組みは日本で初の取り組み。サブリース家賃の設定や、建築費、権利関係については、試行結果を踏まえて決定していく。

通常のアパートよりも建築コストがかかるため、4~6%の実質利回りが出せるように試験期間中にコストの見直しを進める。中核都市を皮切りに都内、政令指定都市、地方都市で戸を試験運用の後、2020年度をめどに商品化して毎年100棟の受注を目標に掲げる。

入居者が一部実費負担

賃貸住宅におけるカスタマイズは8年ほど前に始まった。都市再生機構(神奈川県横浜市)や賃貸住宅のコミュニティ形成事業を手掛けるまめくらし(東京都杉並区)の青木純代表らが先駆け的な存在だ。現在では、リノベーション会社のハプティック(東京都渋谷区)がアクセントクロスや床材を選べるサービスを提供。不動産事業やリノベーションを手掛けるNENGOは、『仕立てる賃貸』ブランドを6年前から企画してきた。物件ごとに工事費を決めた後、入居者が住宅設備や内装などをスタッフと相談しながら決めていく仕組みをつくり、50件の実績を上げている。工事費は4年以内で回収できる設定だ。施工物件のうちオーナーの予算を超える分について、実費で入居者が負担したケースも出てきている。キッチンタイルの採用や床材のグレードアップなどで20万円以上を入居者が払い、自分好みの部屋に仕上げた。入居者は30代前半がメーンで、デザイナーや建築関係などが多い。「居心地がいいと思う空間がつくれる賃貸住宅はこれまでになかった」のが成約理由だ。家賃は平均で2割以上上げて満室で稼働する。ここにきて、既築に加え新築においても入居者の希望を取り入れるカスタマイズ物件が出てきた。裏を返せば、それだけ賃貸住宅の入居者獲得合戦が激化しているということだ。風向きは借り手市場に移行した。カスタマイズ賃貸により、入居者ニーズの傾向を生の声から得ることで、次の部屋づくりに生かしていけるだろう。

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