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【長時間労働問題を考える】21時のオフィス消灯後、営業車内で事務作業

働き方改革関連法施行が迫る中、労働環境の早急な整備が求められている。
不動産業界における長時間労働の実態を取材し、今後の対応策を探っていく。

追客やサイト入稿業務で1日4時間の時間外労働

新興不動産会社で賃貸仲介営業を担当していたAさんは「24時過ぎまで働くのが常態化していた」と振り返る。
4年間勤めたが、業務量の多さに耐えきれず辞職した。

昼間は物件写真の撮影や内見同行に時間が費やされ、店に戻るのは暗くなってから。
それから顧客への電話連絡やメール、ポータルサイトへの入稿業務などで毎日4時間以上時間外労働を行う日々だった。
帰宅するのは日をまたいでからで、終電に飛び乗るのが当たり前になっていた。

店舗は年中無休のため、休みの日でも働かなければ店舗が回らず、上司から遠回しに出勤を求める指示があった。

入社して2年後に、給与体系が固定残業制になったが、固定分を超過した時間の勤務について残業代が支払われることは一度もなかった。

社員は入れ代わり立ち代わりで入っては辞めていく。
「3日でいなくなる社員もいた。4年続けていたのは自分くらい」(Aさん)

スタッフが長続きしないため、その分の仕事がのしかかってくる。先が見えない日々に疲れ果てた。

不動産会社社員から年100件弱の相談

ブラック企業ユニオン(東京都世田谷区)は2014年に結成。
労働問題の相談を受け、企業側との交渉を行っており年間2000件の相談が寄せられる。

不動産会社に関する相談は年に100件弱ほどだ。
相談内容は、労働時間の長さへの改善要望や残業代の不払い分を取り返したいという従業員からの連絡が中心だ。

前身のNPO法人時代から同組合の活動に10年にわたり携わってきた青木耕太郎氏は「不動産会社の長時間労働の場合、いくつかパターンがある。
売買営業では会社のノルマが厳しく目標達成のために労働時間が長くならざるを得ないというケース。
賃貸営業については、例えば、就労時間が店舗の営業時間に準じて朝10時から夜8時までと決まっていても、その前後の準備や閉店後の事務作業を残業の前提としていることで労働時間が長くなる話が多い」と説明した。

働き方改革が叫ばれる中、残業時間削減のために手を打つ不動産会社もあるが、状況が悪化している事例も出てきている。
その1つが持ち帰り残業だ。ある大手不動産会社は21時にオフィスの消灯をし、従業員を帰宅させるようにした。

だが、従業員の業務量を減らしていないため、従業員は消灯後に営業所の近くのカフェや車の中で私用のパソコンを使って事務作業や顧客対応を行い、結局、23時すぎまで働かざるを得ない状況になっているという。

固定残業代も課題だ。残業代が給与に含まれているケースで、悪質な場合には月80時間の固定残業代を設定している会社があり、過去には訴訟で会社側の主張が棄却された判例が出ている。
「法律的には違法でも、争わなければまかり通っている雇用契約もあるので注意が必要。
会社側からの改革の限界もある。従業員が権利を行使しないと労働環境は改善されない。
残業代の不払いは、証拠を集めて交渉に持ち込めば9割方支払われる。
タイムカードだけでなく、交通系のICカードの履歴や、LINEなどのメッセージが残業の証明になることもある」(青木氏)

同組合では、不動産会社との交渉も行ってきた。
2016年にはハウスメーカー系賃貸営業部門で、数人の従業員から残業代不払いの相談を受け、企業側と話し合いを続け、1年後に不払い分の残業代を支払う合意に取り付けた。
「働き方改革を進めるなら、社員の業務量を見直さないと意味がない。
だが、企業は業務量を減らすと売り上げに響き、人材を増やすと人件費がかさむためやりたがらないのが実情」

契約書類の整備急務国の助成制度も活用

長時間労働問題に対して、どのような対応をしていけばいいのか。
不動産会社約20社と顧問契約を結ぶ、咲くやこの花法律事務所(大阪市)の西川暢春代表弁護士は「まずは雇用契約書、就業規則をきちんと作ること。
加えて、タイムカードで従業員の労働時間を把握することが重要。
それができていない不動産会社が多い」と話す。前述の点ができていないと、企業として生き残れないと警鐘を鳴らす。

残業代支払いを求める訴訟を起こされた場合にもタイムカードがないと、従業員の主張に反論できる証拠がなく、なおかつ基本ができていない会社だという悪印象を与えるという。

就業に関わる契約を整えたうえで、残業時間と残業代を減らすような雇用条件などを専門家の指導のもとに作っていくことだという。

残業時間に関して、環境整備のために、国の制度を活用していくのも手だ。
厚生労働省労働基準局監督課の担当者は「各地域の労働局や働き方改革推進支援センターなどに相談してもらいたい」と話した。
各都道府県に18年4月から設置している働き方改革支援センターでは、国による企業への支援メニューや助成制度についての情報も提供している。
業務効率化のシステムを導入する際に助成金が出ることもあるという。

まずは自社で何ができていないかを見極めたうえで、契約書類の整備や業務効率化を、段階を経て実践することが大切だ。

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