スルガ問題、家主の救済足踏み

スルガ銀行(以下、スルガ:静岡県沼津市)のシェアハウス等関連不正融資で経営に行き詰まった家主らが、同行に対しADRの申し立てを行い受諾された案件が出てきた。
借り入れ元本の一部カットを求めていたが、スルガ側の会計上の問題が浮上。調停に至らぬまま家主の救済が足踏み状態になっている。
スルガで融資を受けた家主たちは、第三者の弁護士や専門家が仲裁を行うADRの申し立てにより元本カットや金利の見直しを実現し、経営の健全化を進めていきたいと活動してきた。
現在、同行に不動産ADRを申し立て、16件が受諾された。そのうち8件がシェアハウスだ。
他に、10人ほどの家主から依頼を受ける弁護士が春ごろをめどに金融ADR等の準備を進めており、ADRの申し立てが続く可能性が高い。
だが、状況は前進しない。スルガからは「元本カットを検討する」という内容の受諾書が届いているものの、その後調停まで進んだ案件はゼロ。
調停に至らない大きな要因は、スルガ側が元本カット分を特別損失として計上することが会計上認められるのかを国税当局に確認をしているものの、その結論が出ていないことが挙げられる。
ADRの特徴は訴訟に比べ、費用がかからず調停が成立するまでの時間が短い点だ。
そのため裁判よりも利用のハードルが低い(図参照)。


不動産ADRと金融ADRの違いは申し立て内容にある。
申し立てが不動産事業に対するものか、融資に対するものかで区別される。
今回の不動産ADRのケースは、申し立て側が元本カットや金利等の見直しを求める点では金融ADRとあまり変わらないという。
ADRの手法に家主が感心を示すことになったきっかけは2018年10月に同行に対して出された金融庁の業務改善命令だ。
「金融ADRなどを活用した借り入れ元本の一部カットも含めた債務者への対応」が内容に盛り込まれたことは家主にとって追い風になるはずだった。
ADRに詳しい一般社団法人不動産仲裁機構(東京都中央区)の大谷昭二理事は「今回のような自社の不正行為の場合、貸倒引当金として無税の経費計上はできない。
さらに元本カットの比率の妥当性や根拠をどこに置くのかの基準設定が難しいという課題もある。
会計上の問題は時間がかかるため、先に金利や返済条件などについて話し合い、元本に関しては後から議題にのせる手法をとることになるだろう」と解説した。
2月19日に行われた衆議院財務金融委員会では、共産党の宮本徹議員が家主の救済について「金融庁がイニシアチブを発揮し税務上の問題を解決し、税務当局と相談がうまくいかないのであれば、必要ならば法整備も視野に入れて被害者を救済する手立てを考えていただきたい」と意見を陳述。
それに対し、麻生太郎国務大臣は「金融庁としてはスルガ銀行が個々の債務者に対し、税務関係の問題も含み、可能な限り顧客の理解と納得を得て解決することを目指しているか、適切な対応を行っているかについてモニタリングをし、必要に応じて指導していく」と発言した。
金融庁の業務停止命令は4月12日までと、期限は迫る。
スルガ側もそれまでに一定の家主対応の結果を上げたいところだ。だが、税務の問題が法改正にまで広がると、短期での解決が難しくなる。
家主の救済はもはやスルガだけの問題でなく、管轄官庁や政府の積極的な関与が必要になっている。

関連記事