民泊新法 施行1年で届け出件数7.5倍

外国人需要の高いエリアに商機

住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)が2018年6月15日に施行されてから1年が経過した。住宅の一部屋を1日単位、有償で貸し出すことを認める法律だが、年間180日の営業制限が設けられているため、空室を民泊新法で活用したい賃貸管理会社からはビジネスとして成り立たないとの声も上がっている。だが、運営コストに対し需要が高い地域などでの活用事例が広がりつつある。

国の発表によると、民泊物件の届け出件数は5月15日時点で1万6588件。18年3月15日から登録を受け付けており、民泊新法施行日の届け出数と比較すると約7.5倍にあたる。既存の賃貸住宅を新法下での民泊で運営するには利益を出しにくいという声が多い中、参入者は確実に増えている。
利益を出しにくい理由は2つある。1つは180日以内に制限していること。2つ目は、上乗せ条例によって民泊営業に厳しい規制をしている自治体があることだ。

だが、観光需要をある程度見込め、かつ家賃が低いエリアであれば民泊事業で利益を出すことができる。例えば、札幌市中央区で民泊を行う場合、さっぽろ雪まつりが行われる2月のみの1カ月間で年間の家賃収入を稼いだという事例もある。北海道の民泊宿泊者数は、同イベントが開催される期間を含む2月1日から3月31日までの2カ月間で約4万5000人に上る。この期間の宿泊者数は、約10万1000人の東京に次いで2番目に多く、観光需要が高いことがわかる。

「180日の営業制限がある中で売り上げを伸ばすために届け出の戸数を増やす企業が多い」。こう話すのは一般社団法人北海道民泊観光協会(札幌市)の南邦彦代表だ。

5月21日に北海道の自治体が民泊新法を解説するセミナーを開催したところ、157人が参加した。民泊運営事業者のほか、金融機関やリースで家財道具を提供したい家具メーカーなどの参加もあったという。

観光需要が高いことで民泊運営と賃貸住宅として貸し出したときの収入にギャップが生じるのは札幌だけではない。民泊・旅館業の届け出・許認可業務を全国で行う日本橋くるみ行政書士事務所(東京都中央区)の石井くるみ代表は、「福岡や横浜、富山なども180日制限下でも事業収益を上げられるとみられ依頼されるケースがある。例えば黒部ダムが有名な富山県は国際空港があり台湾や香港からの旅行者が多い。家賃6万円の160㎡一戸建てで民泊運営すると月額売り上げ30万円が見込まれている」と話す。

自治体の上乗せ条例によって、運営できる曜日を制限しているために利益を出しにくいという2つ目の理由がある。例えば東京都中央区の場合、運営可能な期間は土曜日正午から月曜日の正午までとしている。 東京都心など賃貸需要が高いエリアでは、条例の厳しいエリアを避け、残りの185日以内をマンスリー賃貸で運営し利益を確保する方法が主流になりそうだ。民泊代行業を手掛けるmatsuri technologies(マツリテクノロジーズ:東京都新宿区)では、マンスリー賃貸と民泊を併用する事業を行っている。運営件数は約200件で、売り上げも上がっている。「1年前から全体で247%に伸びている(民泊売り上げ÷家賃で計算)。マンスリー事業の稼働率は9割で、民泊の稼働率も85%以上」と吉田圭汰社長は話す。

こちらは無料会員限定記事です
会員になると続きをお読みいただけます

関連記事