企業研究vol.021 吉田 創一 社長

28校と提携し学生仲介年1700件

1974年の創業以来、京都市北部で管理・仲介を中心に不動産事業に取り組んでいる。吉田創一社長は、4年前に社長に就任。企業理念である「地域に貢献」を継承しつつ、社員一人ひとりの働き方の意識改革を行う。新たな風を取り入れる吉田社長に、その思いを聞いた。

企業理念は地域に貢献 京町家の再生も手掛ける

――創業の経緯を教えてください。

吉田　1974年に、父親であり現会長の吉田光一が、この地で当社を立ち上げました。創業まで吉田は、世界各国を旅して回っていました。イギリスを訪れた際に、部屋探しを現地の人に手伝ってもらった経験から、恩返しをしたいという思いで賃貸仲介業を始めました。

――現在は管理会社としても戸数を伸ばされていますね。

吉田　拠点を置いている京都市北区は、大学や専門学校が多い地区としても知られています。もともと、大学生協が行っていた地方から来る学生の部屋探しを、当社が請け負うところからスタートしました。現在は28の大学や専門学校と提携し、学生のサポートをしています。仲介をしていく中で、やはり自社で紹介できる物件がないと、大学側からの信頼が得られないという考えに至りました。徐々に地元のオーナーから信頼を得られるようになり、現在は京都市北区、左京区、上京区を中心に約7500戸の管理をしています。

――吉田社長は2代目ということですが、会社として貫いている信念はありますか

吉田　「地域に貢献」これが、創業当時からのモットーです。管理・仲介を通じて、京都をよりよい街にしていきたいと常々思っています。伝統的建造物に指定されている京町家の再生にも力を入れるようになりました。これまで300棟近くの改修を行っています。

改修を手がけた京町家では、地域住民の交流の場としても人気がある。

――京町家は、昨今のインバウンドブームにより人気が出ていますね。

吉田　改修を手掛け始めた15年前には京町家はただの古家という扱いでした。建て替えた方がいいという声も多くありました。現在は行政と一体となって景観保全のために京町家の継承に力を入れています。

――賃貸物件としての需要も高いのでしょうか。

吉田　府外だけではなく、海外の人からも多くの支持が集まっています。せっかく京都に住むのだから、日本の伝統文化を感じられる部屋に住みたいという要望も多く入ります。京町家は、木造2階建ての物件なので、ファミリーやDINKSから高い人気があります。また、宿泊施設や店舗としても再生し、入居者はもちろん、地域住民が交流できる拠点としての価値も見いだしています。

8年前から外国人対応 留学生からの信頼得る

外国人スタッフは留学生にとっても頼れる存在だ

――京都の学生を多く仲介していると伺いました。最近は各大学が留学生を増やしています。今後、増加が見込まれる外国人の対応などはいかがでしょうか。

吉田　8年ほど前から、外国人スタッフを採用し、留学生や海外から来る大学職員の部屋探しを行っています。外国人の仲介数は年々増加し、5年前は200件だったのが、2018年は500件まで伸びました。外国人の対応を始めたのは、京都の不動産会社の中でも先駆けだったように思います。というのも、先述したとおり、当社は創業者の吉田が異国の地で助けられた経験から始まっています。初めて日本を訪れる学生は、言葉や文化も分からない土地で、不安も多いでしょう。母国語が話せるスタッフがいることで、部屋探しだけではなく生活面の相談などもできる存在として頼りになっているようです。

――今後の目標や展開を教えてください。

吉田　まずは、管理戸数を1万戸まで増やしたいと考えています。もちろん、ただ増やすだけでは意味はありません。高い入居率を維持し、入居者、オーナー双方からの信頼を第一としていきます。そして、理念としている地域への貢献を忘れることなく、簡単な相談事や困り事一つからでも、声を掛けられるような、地域になくてはならない存在でありたいと思っています。