企業研究vol.022 齊藤 晃一 社長

仲介店70万回訪問、現場の声から戦略を立案

ポータルサイトでの部屋探しから仲介店訪問、内見予約、成約に至るまで、顧客の行動には必ず根拠がある。物件の立地、コンセプト、賃料や入居者の年代、年収など多くの要素が絡み合って成立するリーシング。そこにおいて、「勘」ではなくマーケティングによる分析と戦略立ての重要性を説くリーシング・マネジメント・コンサルティングの齊藤晃一社長に話を聞いた。

潜在入居者の反響を追求
課題解決の最適解を探る

――賃貸住宅のリーシング支援を行うようになったきっかけは。

齊藤 当社は2005年に賃貸管理会社を買収し、家賃債務保証事業からスタートしました。保証サービスの黎明(れいめい)期でしたが、後発ということもあり、契約獲得のための価格競争に巻き込まれ売り上げが伸び悩みました。販売代理店数をいくら増やしても待っているだけでは売り上げは上がらないと考え、入居者募集の支援を開始しました。

そもそも保証契約を獲得するには入居者に部屋を借りてもらわないといけません。そこで役に立ったのがコンサルティングファームやITマーケティング企業で培ったノウハウでした。端的に言えば、やることはレスポンス広告の追究です。通販広告であれば、何を見て問い合わせをしてきたかなどをヒアリングし、そのデータを蓄積して次の販促に生かすことが常識です。自社商品の購買層、販路、継続性を把握することで次の戦略を立てることができるからです。

賃貸も考え方は同じで、ポータルサイトなどで物件を露出し、問い合わせ、内見を経て見込み客を絞り込みクロージングするという一連の流れがあります。それぞれの段階において募集物件がどのような属性から反響を得たのかが分かるのですが、多くの会社がそのようなデータを蓄積せず、感覚で営業していました。

――客付けの部分にマーケティングサービスのニーズがあると考えたのですね。

齊藤 結局、保証事業は08年に売却しました。当初は3年後の上場を目指してベンチャーキャピタルから5億円を調達し、1年間で100人を雇用したので、譲渡の際は投資会社に厳しい意見をいただきました。現在は賃貸住宅のリーシングマネジメント業務を専門に手掛けています。顧客は不動産オーナー会社、プロパティマネジメント会社になりますが、9割以上がJ-REITや住宅系ファンドなどのプロオーナーです。

――その理由は何でしょうか。

齊藤 たとえば9万7000円の物件を10万円にしたいという依頼を受けた場合、近隣物件の状況把握やそれに基づいた賃料査定、最適なプロモーション戦略などを企画、実行していきます。対象となる物件数が100戸あれば年間360万円の家賃収入アップにつながりますからインパクトは大きい。しかし管理会社の目線では、わずかな管理費のためにここまで労力をかけたくないという心理があるのでしょう。そういう意味では不動産オーナーに価値を感じていただきやすいサービスになります。

セミナーは不動産オーナーから好評

――具体的にはどのようなサービスを展開しているのでしょうか。

齊藤 入居申込書に基づいた入居者属性調査、周辺の競合物件などを対象にしたミクロマーケットの動向調査、物件認知度の拡大やブランディングのためのセールスプロモーションなどがあります。空室情報を仲介会社に訴求するサービスもあり、当社スタッフが対象エリアの仲介店舗を一つ一つ回りながら空き物件をPRしつつ、当該エリアの賃貸需要や適性賃料をヒアリングしています。

07年5月から始めたこのサービスを通して、毎月3000回、累計で約70万回の仲介店舗訪問を行ってきました。仲介スタッフの生の声を、リーシングの施策に反映しているところが最大の強みです。2年前には、この訪問実績を生かした業者間情報流通システムを開発しました。首都圏の最大約3万人の賃貸仲介スタッフに対して、オーナーが空室情報をPRできるものです。仲介スタッフが事前に希望物件を登録することで、オーナーは希望に沿う物件を直接訴求でき、仲介スタッフは欲しい物件情報だけが手に入る。双方にメリットがあります。

――顧客の課題に沿ったサービス提供を行っているのですね。

齊藤 コールセンター業務も受託していますが、単なる電話対応の代行ではなく、そこから得る情報を蓄積、分析してリーシングの施策にひもづけることが目的です。サービスではなく、マーケティングという考え方を賃貸業界に根付かせたい。今後、IT重説や電子契約、不動産テックなどによって、部屋探しはBtoBtoCからBtoCに変わっていく可能性が高まっていきます。そうなればマーケティングやプロモーションの重要性も高まります。エンドユーザー向けのプロモーションに強い代理店を見極める力も必要になってくるでしょう。

管理会社は、物件担当者がプロモーションやクレーム対応、オーナーへの報告業務、リフォーム会社の手配などを1人で担うケースが多いと思いますが、マーケティングやプロモーションの専門部署、専門スタッフを今後3〜5年で育てていく必要がある。すでにデータを蓄積している会社もありますが、それが生かせていない会社に対してコンサルティングを行うケースもあります。

――今後の展開を教えてください。

齊藤 19年末にリリースを予定しているのが、賃貸物件への電子申し込みから入居者属性分析までをカバーするシステムです。現在開発中の顧客管理システムとの連携も想定しており、反響履歴の分析やリーシング戦略の構築に役立てていただけるものになります。当社にとってはサービスの受託が本望ではなく、マーケティングに対する理解者を増やし、データの蓄積や分析ができる体制構築に向けたコンサルティングを手掛けていきたいと思います。

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