企業研究vol.023 田村 穂 社長

250万人のデータ活用で事業領域拡大

経営計画をプレゼンする田村穂社長

 不動産テック活用と店舗拡充を推進する賃貸仲介大手のハウスコム(東京都港区)は、2019年6月14日、東京証券取引所JASDAQ(ジャスダック)から同取引所市場第二部に市場変更した。同21日には、東証一部銘柄への指定にかかる申請を行った。「成長にスピード感は欠かせない。常に新しい目標に向かっていなければ」と語る田村穂社長に今後の展開を取材した。

22年までに208店舗体制へ
地方都市にも積極的に出店

――7月13日、東京都大田区に「大森店」を開設し、全国で180店舗になりました。

田村 19年3月期からの3カ年計画では、「リアル(店舗)」「テクノロジー」「リアルとテクノロジーの融合」の3つのコンセプトで成長戦略を描いています。既存店舗の競争力アップに加え、新規出店による事業規模の拡大も重要施策です。22年までに208店舗体制まで増やす目標を掲げています。

――現在、展開している仲介店舗を地域別にみると、首都圏が6割、東海が2割を占めています。今後の出店エリアは。

田村 最近は全国の地方都市にも積極的に出店しています。6月には静岡県内に「富士店」をオープンしました。これまでは人口が多い首都圏に集中していましたが、10万人以上の都市であれば首都圏との移動を含めた転居ニーズが一定数あるため、北関東や四国も候補地になります。

6月にオープンした「富士店」

――既存店の競争力向上としては、やはり不動産テックの活用が挙げられますか。

田村 「リアルとテクノロジーの融合」ですね。仲介事業における人材とサービスを磨き上げること、地域密着営業の強化、そして不動産テックやメディアサービスを活用した反響・集客の強化を図ります。不動産テックとしてはチャットサービス『マイボックス』に導入している人工知能キャラクター『コムるくん』による部屋探しを提供しています。店舗の営業時間外は基本的に『コムるくん』が対応しています。

部屋探しをサポートする『マイボックス』

――反響の獲得につながっていますか。

田村 レスポンスの早さは反響を獲得するために、とても重要なポイントです。ユーザーが閲覧した物件の履歴情報を取得し、ユーザーの好みそうな物件情報を自動表示するほかに、手続きに関する質問にも回答できるよう設計されています。

――オンライン内見やIT重説にも取り組んでいます。どの程度、実施していますか。

田村 オンライン内見やIT重説は遠方への引っ越しなど、何度も店舗に足を運ぶのが難しい顧客を中心に活用しています。実施割合は仲介件数の40%程度です。時間さえ共有できれば店舗のスペースを使わずに済むので、顧客の利便性と業務効率化が図れています。ただ、当社では仲介事業において分業制は考えておらず、さまざまな業務をこなせる多能工な社員育成に努めています。業務効率化の面では、どのような仕事内容にどれだけ時間が取られているかを調査し、省力化できるように対策を取ってきました。たとえば社員が休みを取ることで発生する引き継ぎ業務も無駄が多いことが分かり、必要ない引き継ぎ業務をやめるようにしました。

―― 10月からは重要事項説明と契約書を電子交付する社会実験が始まります。いよいよネット上で完結する仲介事業が現実味を帯びてきました。

田村 オンライン化によって、仲介事業は仕組みがシームレスになり、便利でより生産性が高くなるでしょう。この仕組みが業界のインフラとして構築されるべきだと思います。当社もそこに寄与すべく、テクノロジーを提供したいと思っています。

――仲介会社として管理会社の業務支援を行うということですか。

田村 対象にしているのは町の不動産会社です。例えば、内見案内や問い合わせ、重要事項説明ができずに困っている場合に、当社のITツールで部分的に業務を請け負うようなイメージです。

――地域情報の発信にも注力していますね。

田村 公式Facebookやウェブマガジン、Instagramなどを活用し、独自の視点で地域の情報を紹介しています。店舗の店長による『ご当地コラム』もあります。地域情報をしっかりと把握することで、接客時の提案力が向上します。

――「リアルとテクノロジーの融合」による競争力ですね。

田村 成長戦略では「賃貸サービス業」から「住まいのサービス業」に事業領域を広げ、250件の顧客データと年間約7万6000件の成約データを活用した「住生活サービスのマッチングプラットフォーマー」構想を練っています。入居前だけでなく入居中の生活支援サービスをニーズに合わせて提供するイメージです。

――賃貸業界のIT化をけん引する取り組みですね。新たな展開に期待しています。

経営計画14期生集合写真

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