日本橋鑑定総合事務所(東京都中央区)は、2006年の創業以来、地主の悩みに対応し、不動産鑑定とコンサルティングで実績とノウハウを蓄積してきた不動産鑑定士事務所だ。累計顧客数は201人(24年2月15日末時点)。
近年注力しているのは、20年から始めた「ユーチューブ」チャンネル「地主の駆け込み寺ch」だ。毎週金曜の午後6時に配信。地代、共有地、借地や借家、立ち退き料、税金、相続などに関する問題の解決方法および交渉方法、さらに判例などを解説する。ニッチな分野の番組ではあるが、登録者数は1000人を超える。
登録者は男性が9割。55歳から64歳が35%、65歳以上が40%を占める。娯楽で視聴するといるのではなく、悩みを抱えている人が登録しているという。
同社の三原一洋社長はこれまで地主向けの書籍を4冊出版。この書籍の読者や創業時から続けているブログ、SNSのX(旧ツイッター)、そして、このユーチューブチャンネルの視聴者から相談を受ける。
動画は毎週金曜日の午後6時に更新
ブログ、書籍、ユーチューブチャンネル、いずれにも共通している内容は、事例を中心に解説していること。初心者でもわかりやすい内容が、登録者を増やしている理由だ。ユーチューブチャンネルを視聴する地主の中には、夕食時に毎週家族で視聴している人もいるという。
地主の問題解決をメインに取り組む不動産鑑定士事務所は珍しい。その理由について「事務所を設立する前に見た光景が原点となっている」と三原社長は話す。
その光景とは、04年に東京都八王子市の郊外で見た「財務省管理地」の立て看板と、ロープで囲まれた2000㎡の土地。地主は重すぎる相続税が払えなかったために、誰にも相談できず、土地を物納したことが容易に想像できたという。
事例で解説する著書が好評
「先祖代々の財産を取られた地主さんの悲痛な叫びが聞こえてくるようだった。自分がアドバイスできていれば、土地を奪われずに済んだはず」。こう感じたことから、地主の悩みを解決する不動産鑑定士事務所を開業した。
同社による不動産鑑定士1人あたりの賃料の鑑定評価の件数は、全国平均の15倍。国土交通省が公表する1年間で不動産鑑定士が依頼を受けた鑑定評価の総件数を、全国の不動産鑑定士の登録者数で割った不動産鑑定士1 人あたりの依頼件数は0.33件。これに対し、同社は平均5.1件に上る。
「今後も地主の困り事に対応できる不動産鑑定士事務所として展開していく」(三原社長)
(2024年2月26日13面に掲載)