3日間の被災生活準備を
部屋探しで需要増 分譲より対策進まず
10月にリクルート(東京都千代田区)SUUMO(スーモ)リサーチセンターが発表した「2023年度賃貸契約者動向調査(全国)」では、「魅力を感じるコンセプト住宅」で「防災賃貸住宅」が一番多くの票を得た。同調査は、23年4月から24年3月までに賃貸住宅へ入居した、全国の18歳以上の男女約4000人を対象に実施。部屋探しにおける行動実態やニーズを把握することを目的とする。「デザイナーズ賃貸住宅」や「子育て世帯向け」など23項目の選択肢の中で、備蓄倉庫や蓄電池などを備える「防災賃貸住宅」が35.1%だった。このように、近年の自然災害、それらに伴う停電などへの対策に関する、入居者の意識・関心が向上した結果となった。
一方で、災害発生後に被災生活を送る場所を「自宅」と想定する賃貸マンションの入居者は、分譲マンションのそれよりも少ない傾向にある。
全戸一括型マンションISP(インターネット接続事業者)最大手のつなぐネットコミュニケーションズ(同:以下、つなぐネット)が7月7〜15日に実施した「マンションでの防災対策に関するアンケート」では、分譲・賃貸の集合住宅の入居者約4000人に災害発生時の対応についてヒアリング。「もしも大地震に被災したら、その後はどこで生活することを想定していますか?」という質問に対し、「自宅での生活を継続すると思う」と回答した分譲マンションの入居者は63.4%だったのに対して賃貸住宅の入居者は44.8%だった(図1参照)
また、住まいの集合住宅全体で実施している防災対策についての質問で最も多かった回答は、分譲マンションの入居者が「防災訓練の実施」(36.9%)だったのに対し、賃貸住宅の入居者は「特に何もしていない」(56.8%)であった。
このように分譲マンションと比べて賃貸住宅の入居者は災害発生時に自宅で避難生活を送る「在宅避難」を選ぶケースが少ないことがわかった。その背景には物件全体で防災対策を行えていないことがあると考えられる。