加藤 冨士夫 社長【 亀岡大郎のトップ対談 】

「貸し店舗ビジネス」の世界で天下をとる

「店舗の閉店市場をつくろう」と2008年に産声を上げたテンポアップが設立10年の節目を迎えた。貸し店舗の年間賃貸仲介件数は約2000件に上り、全国31支社を構えるに至った。次の10年は賃貸住宅業界に積極的に関わる姿勢を示しており、「アパート建設・管理会社との協業」「店舗仲介のFC化」などをテコに存在感を高めようとしている。加藤冨士夫会長に戦略を明かしてもらった。

宅建業者が避ける店舗市場逆張りで仲介ノウハウを蓄積

加藤 17年ぶりにお会いします。御社グループ誌の『店舗ビジネス』の対談以来です。亀岡先生は92歳になりましたのに、相変わらず若々しいですね。17年の歳月をまったく感じさせません。

亀岡 健康を保つために定期的にウォーキングしています。

加藤 先生のお元気な様子をみていると、「70代でもまだイケる」と勇気がみなぎってきます。

亀岡 それはよかったです。店舗仲介の仕事は続けていますか。

加藤 はい。1993年に始めたものの、病気で一時中断せざるを得なくなりましたが、改めて再起を図り2008年にテンポアップを設立して今年で10年目になります。店舗の閉店情報をいち早く仕入れ、提携先のフランチャイズチェーン本部に紹介して客付けしています。店舗の年間賃貸仲介件数は2000件、北海道から九州まで31支社を抱えるに至りました。300人近い営業マン(個人事業主)を集めて成功報酬制とすることで成り立っています。店舗の供給元となるチェーン店との付き合いは1500社以上に上ります。

亀岡 店舗仲介といえば、戦後は多くの不動産会社が着手した定番の事業でしたが、その後大部分の会社が住宅仲介に転換しました。

加藤 店舗市場は、商売に欠かせない場所を提供するインフラ産業でありながら、多くの宅建業者が得意としない隙間産業でもあります。私はここに目を付けて経験を積んできました。

亀岡 逆張りの発想ですね。「人の行く裏に道あり花の山」とはよくいったものです。

加藤 私からすればアパート仲介のほうが難しいです。賃貸住宅の入居者は「生存権」で守られるため、滞納常習者でも簡単に追い出すことができません。一方店舗テナントは「営業権」に対応しています。「営業権」で成り立つ限りは賃借双方の信頼関係を失なわれた時点で退去を促せるため、滞納リスクを低く見積もれるのです。

亀岡 しかし空き店舗の情報はどう仕入れるのですか。

加藤 閉店情報はウェブ上に公開されているものではないため、人間関係の中から鉱脈を見いだすしかありません。情報産業であり、人脈産業といえます。

亀岡 その点でいえば新聞記者も同じですね。人と会話ができなければ良い記事を書けるようになれません。ネットが発達した今でも人間関係なくして商売は成り立たないでしょう。

加藤 難しいのは、どう組織を動かすかです。営業マンである約300人のエージェントは弊社の従業員として専任登録を義務付けてはいるものの、個々が自立して成果を出すためにはそれだけでは不十分です。

亀岡 組織づくりは難しい。弊社では新しい業界紙を立ち上げては、やる気のある社員を社長に抜てきしています。どう抜てきするかというと、権力闘争で決めています。取材がうまい、営業ができる、などの実績を上げさせるのです。

加藤 磨き合う相手をつくることは大切です。私が考えたのは、エージェント同士「横のつながり」をつくることでした。団結して一つの方向に向かわせるためには、まず互いの情報を共有する場が必要です。「国際交流委員会」「マナー委員会」などの横串で成り立つ組織、神田にバーまで構えて、有益な情報交換の場所として役立ててもらっています。「与えよ、されば与えられん」の精神です。交流を持てば競争原理も働きやすくなり、高齢でも年収1000万円を稼ぐ人がたくさん出てきています。

亀岡 組織づくりなくして規模拡大はありえませんね。

加藤 「どういう仕組みで事業を大きくしていこうか」と模索していた頃に、着目したのが、わずか250年足らずで大国にのし上がったアメリカ合衆国の仕組みでした。異文化が合流していて、文化の衝突もあったけどそこには「自由」があり、自由を守るために一定の規律があり、合衆国として団結しています。一人一人独立した個人事業主を「州」、弊社を「合衆国」と見立て組織化を図りました。自由でありながら一定の規律を重んじてもらえるように、これらの理念をバイブルとして可視化し、エージェントに教育しています。

(続きは本紙で)

テンポアップ
加藤 冨士夫 社長

昭和19年2月22日生まれ。愛知県豊田市出身。会社勤めをせず、20代から立て続けに事業を起こした。損保代理店、大手電機メーカー在庫処分のイベント販売、AMFボウリング場経営の受託、学習塾チェーンのFC化など。平成5年、日本ソフト店舗を立ち上げたが、19年に病気のため株式を譲渡した。翌年10月、テンポアップを設立した。

テンポアップ
本社所在地 : 神奈川県横浜市西区北幸2-9-10 HSビル8階
設立 : 創業1993年、設立2008年10月
資本金 : 9995万円
事業内容 : 事業用不動産の賃貸仲介と売買仲介、店舗開発代行、アドバイザーなど

関連記事