太陽光など再生可能エネルギーの全量買い取り制度について議論している経済産業省の「調達価格等算定委員会」は、25日、買い取り価格の委員長案を公表した。10kW以上の太陽光発電については、1kWあたり42円、買い取り期間20年とし、当初想定されていた価格を上回る結果となった。
現在、賃貸住宅で導入が進んでいる太陽光発電システムは、オーナーへの還元率が高い「共用部連系」だ。発電しても利用しなかった余剰電力を電力会社が購入することで、オーナーの収益になる。2011年度の買い取り価格は10kW未満の住宅用は42円、10kW以上になると24円、買い取り価格の固定期間は10年だった。
これに対し、7月から始まる太陽光発電システムによる全量買い取り制度が委員長案通りの買い取り価格、期間で成立すれば、オーナーの収益は大幅に増加することになる。
結果、賃貸アパート・マンション等の屋根を活用した産業用太陽光発電の市場は一挙に拡大すると予測される。
今回の発表を受けて年間28メガワットを販売する山善(大阪府大阪市)の住設建材統轄部、営業推進副部長の松田慎二氏は、「予想以上の金額でした」と語った。一方で、「これにより相当数の海外メーカー・投資家が日本に乗り込んでくるでしょう。海外市場がシュリンクしている今、日本は唯一の有望市場。このため今後は品質確保が大きな課題になると思います。決して手放しで喜べる状態とは言えません」と警鐘を鳴らした。
ある大手販売会社トップは、「販売会社の要望に沿った金額となり、電力会社側の力が弱まったと実感しました。大きな面積を持つ賃貸住宅の屋根を活用した産業用の太陽光発電はこれからバブルのように広がっていくでしょう」と予想し、自らも賃貸オーナー向け営業を強化すると語った。
予測以上の金額に期待が高まる一方で、施工技術者の確保や品質維持がどこまで保たれるかに疑問の声も多いようだ。
産業用は投資目的となるため、事業主は発電事業者としての責任が求められる。賃貸経営同様、長期にわたる事業となるため、オーナー側にもある程度の知識と目利きが必要となるだろう。