リノベや駐車場シェアなど多彩に
電鉄会社が沿線の空き家や空室の活用提案のため、他業種と提携してリノベーションプランなどを開発する動きが活発化している。各社、広告やセミナーでサービスの周知を進める。
電鉄会社が沿線の空き家に人を呼び込もうと知恵を絞っている。阪急不動産(大阪市)は4日、阪急阪神沿線の空き家問題を解決するためのサービス『阪急の空き家サポート』に新メニューを追加した。ハプティック(東京都渋谷区)と共同開発した『賃貸リノベーションパッケージ』とakippa(東京都千代田区)の運営する空き駐車場の時間貸しサービスだ。
共に対象エリアは阪急、阪神線の主要駅が中心。同社は2016年9月から『阪急の空き家サポート』を開始。これまでに42件の問い合わせがあり、売買仲介2件、賃貸住宅のリノベーション2件、空き家管理など合わせて8件の受注につなげている。今後はホームページに加え、インターネット広告も出し利用を増やしていく。
京浜急行電鉄(以下、京急:東京都港区)は4月から『カリアゲ 京急沿線』サービスをスタートした。沿線の空いた戸建てや賃貸住宅の空室、空き店舗などを、京急の工事負担でリノベーション。京急が6年間サブリースし、サブリース家賃のうち10%をオーナーに払う。6年後にはオーナーの費用負担なしで、リノベーションした物件が手元に残る。京急広報部の菊池哲也氏によると、まだ契約には至っていないが、30件ほど問い合わせがあり、オーナーとリノベーションの内容を交渉しているところだという。
京急沿線では特に横須賀市、横浜市南部での人口減少率が高く、空き家も多くなることが予想される。そのエリアを中心に、セミナーの開催や、ダイレクトメールなどでサービスの利用を促していく考えだ。
小田急電鉄(以下、小田急:東京都新宿区)は16年10月からハプティックと資本業務提携を結び、『小田急の「安心」サブリース』を始めた。小田急がサブリースし、5年間固定の賃料をオーナーに支払う仕組みだ。実際に施工した案件は、築年数が20~30年ほどのものが主体で、賃料を5~10%ほど上げて、同社の狙い通りの20~30代の若い世代が入居している。「電車内の中吊り広告や駅にポスターを貼ったことで、沿線のオーナーから問い合わせが来るようになった」(広報部 鈴木公夫氏)
グループの小田急不動産(東京都渋谷区)は不動産店舗でのセミナーも年3回実施し20~30人ほど集客してきた。サービスの提供を切り口にしてオーナーとの関係強化につながっている。内装工事に加え、追加で外装工事を受注したケースも出てきた。今後もセミナーを継続しさらなる周知を図る。
電鉄会社が築古物件に人を呼び込む試みはこれからだが、商品開発により沿線オーナーの新規開拓に一部効果が出てきている。一方、ブランド力のある電鉄会社と組むことで、賃貸住宅関連のサービス提供会社にとってもビジネスを広げるチャンスになる。