スルガ銀行(静岡県沼津市)が昨年末より「投資用不動産ローン」の融資営業を再開していたことが分かった。すでに融資を受けた不動産会社によれば、同行は融資対象を「資産のある人」や「検査済み証付き物件」などと条件設定し、他の地銀・信金並みに厳しくしている。2018年春先に明るみに出た不正融資問題からもうすぐ2年。新規実行額が計画値に達するかは読めないが、ローン事業再生に向け一歩を踏み出したことになる。
融資審査厳格化、他行並みに
スルガ銀は「投資用不動産ローン」の融資基準を他行並みに厳格化し、融資営業を再開している。19年12月以降、同行から営業を受けた不動産会社、また実際に融資を受け販売した不動産会社などから「本来の融資の在り方に戻った」との声が聞こえ始めている。金利は不祥事前の4%台から2%前後に引き下がったという。
不祥事前の融資条件と比べて厳しくなったポイントは二つ。「属性」と「物件」だ。
スルガ銀が新たに融資対象とする属性は、すでにある程度の資産を有する者。同行の中期経営計画では、想定顧客について「かつて主要顧客だったマス層(資産3000万円未満)・アッパーマス層(3000万円~5000万円未満)から、富裕層(1億~5億円)まで広げる」と発表している。
同行から案内を受けた東京都豊島区の不動産会社社長は「誰にでも貸すのでなく、その人の年収・借入額・金融資産に見合った融資額を提示するそうだ」と語った。
すでに東京都の不動産会社の顧客で融資が実行された事例が複数ある。同社社長によれば、その顧客は年収700万円の会社員で、中古の賃貸住宅1棟を購入した。自己資金は購入価格の5~10%程度しか持たなかったが「親が一定以上の資産を持っていたことがプラスに働き、審査を通過した」と振り返る。「スルガ銀は営業部門と審査部門を完全に切り離し、審査時に営業が介入しない体制になっている」と説明。不祥事のこともあり、厳しい姿勢で臨んでいるように見えたという。
もう一つが融資対象とする物件の条件だ。東京都新宿区の不動産会社幹部の話では「(スルガ銀は)検査済証付きの物件でないと取り扱わないようだ」と語る。収益不動産の売買仲介を行う同社のもとには、1月にスルガ銀から融資の案内がきた。検査済証とは、建築基準法で定められた建築検査に合格した建物に交付されるもの。対象エリアは、東京都内を中心とした全国主要都市を視野に入れているという。