賃貸経営リスクへの補償拡充【「もしも」のときのための備え 少額短期保険】

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商品|2023年09月12日

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 賃貸住宅において、入居者の家財のほか物件への損害に伴う費用を補償する少額短期保険。その提供元となるのが少額短期保険会社(以下、少短会社)だ。孤独死に付随する費用の補償を行う商品も増えてきた。ここでは8社の商品や特徴を紹介する。

原復や遺品整理費用もカバー

少短事業者52社 15年間で約2倍

 2006年の保険業法改正により誕生した少額短期保険。生命保険や損害保険と比べて保険金額が低く、保険期間が短い一方、保険料の安さや商品数の多さを強みに契約件数を伸ばしてきた。一般社団法人日本少額短期保険協会(東京都中央区)によると、少短会社の数は23年3月末時点で118社。そのうち家財保険を扱う会社は52社と、15年前の08年と比較して約2倍に増えている。23年3月末時点の保有契約件数は約1087万件、収入保険料は1346億円となっており、同じく08年との比較ではいずれも約3倍に伸長した。

収入保険料グラフ

 賃貸住宅においては、家財や建物への損害に加え、入居者の死亡事故が発生した際に、原状回復や遺品整理に伴う費用を補償する保険も増えた。顕在リスクに備える商品が充実するほか、販売代理店となる不動産会社の業務負担軽減、事故報告や保険金支払いの迅速化に向けた取り組みも進んでいる。

死亡事故にも対応 未然の防止活動も

 宅建ファミリー共済(東京都千代田区)は18年より賃貸住宅用家財保険「新すまいの保険ワイド」を展開している。家財補償と賠償責任補償に加え、特約として住宅内入居者死亡費用補償を付帯。契約者が居室内で死亡した際の特殊清掃費用と、病院などで死亡した場合を含む遺品整理費用を補償する。今後世帯数の増加が予想される高齢者をはじめとした、住宅確保要配慮者を受け入れやすくする保険商品だ。

 23年3月末時点の保険代理店数は1万429社。8月30日時点で契約数は約43万件となる。

 同社は保険契約時におけるファクス対応だけでなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)化にも注力する。公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(同)が開発した不動産情報流通システム「ハトサポBB」の申込情報データ化サービス「ハトサポ申込」と、販売代理店向けシステム「宅建らくらくネット」のデータ連携を実施。代理店が入居者の情報を宅建らくらくネットに入力する負担を軽減した。

 東京海上ホールディングス(同)の子会社である東京海上ミレア少額短期保険(神奈川県横浜市)と東京海上ウエスト少額短期保険(大阪市)が、21年に販売を開始した「お部屋の保険 ワイドⅡ」は、23年3月末時点で約141万件の契約件数となっている。通常の補償に加えて08年3月から、入居中に発生した孤独死の原状回復や遺品整理費用を補償する「死亡時修理費用補償」の提供を始めた。同保険を取り扱う代理店は23年5月末時点で1836社。

 社内に事故の査定や保険金の支払いを担当する「損害サービス部」を設け、円滑で適切な保険金の支払い体制を構築済みだ。蓄積された保険事故のデータから、物件の築年数ごとに事故発生に関する傾向を分析して代理店に共有し、未然に事故を防ぐための活動も積極的に行っている。

 Chubb(チャブ)少額短期保険(東京都品川区)は、家財保険と賠償責任保険をセットにした「マイルームプラン」を06年10月より展開。その中でも販売実績が多いのが、15年12月に販売を開始した「修理費用拡張補償免責ゼロ特約付き」のマイルームプラン「パーフェクトプラン」だ。

 窓ガラスや浴槽、洗面化粧台、便器の損壊に加え、不測かつ偶然な事故で被保険者が借用住宅の造作などの破損をした場合も免責金額なしで上限100万円まで補償する。入居者の死亡による居室の汚損損害に対しては、原状回復費用を50万円まで、明け渡しに必要な遺品整理費用も50万円を限度に補償。居室以外で死亡した際の遺品整理も対象とする。

 販売代理店数は約1000社。主な商圏は東日本(北海道を除く)および東海・関西・九州エリアだ。

システム連携推進 DXで利便性向上

 SBIホールディングス(東京都港区)傘下のSBIインシュアランスグループ(同)に属するSBI日本少額短期保険(大阪市)では、21年に保険契約管理システムとの連携のために「Nico(ニコ)API」を開発。不動産プラットフォームや家賃債務保証会社のシステムとの連携で、保険契約時の情報入力の手間を省き、手続きをインターネット上で完結させることができる。

 23年6月には、家賃債務保証会社のジェイリース(大分市)とのシステム連携を開始。7月末時点で5社の不動産プラットフォーム、2社の家賃債務保証会社のシステムと連携している。SBI日本少額短期保険・経営企画部の守谷敬規部長は「手続きの負担を軽減し、不動産会社に使ってもらいやすいサービスを整えている」と話す。

 同社の主力商品は21年に販売を開始した「みんなの部屋保険G4」だ。SBI常口セーフティ少額短期保険(北海道札幌市)との共同保険契約となり、借家人賠償責任保険の上限金額を2000万円としている。23年3月末時点での代理店数は約1500店。同商品を中心とした保有契約件数は約68万件となる。

 ジャパン少額短期保険(東京都千代田区)の「新すまいRoom(ルーム)保険」は約3000社の代理店が販売しており、3月期の保険料収入は32億5000万円、保険契約者数は36万3000人となった。賃貸住宅向けの家財保険以外にも、自転車保険などを提供している。

 同社は、東証プライム上場企業で駆け付けサービスを提供するジャパンベストレスキューシステム(以下、JBR:愛知県名古屋市)のグループ会社。代理店の要望に応じて、JBRの駆け付けサービスを併せて提案している。9月には、不動産関連システム開発を行うイタンジ(東京都港区)が展開する「申込受付くん」「電子契約くん」と連携し、オンラインで家財保険の契約手続きを行えるようにする予定だ。

 引き受ける保険規模が大きくなる大手不動産会社には、包括保険を提供するグループ会社のレスキュー損害保険(東京都千代田区)、管理戸数が1000戸以上の管理会社にはジャパン少額短期保険の商品を提供する。

 e-Net(イーネット)少額短期保険(長野県佐久市)は、保険関連業務のペーパーレス化を実現するシステム「Alpha(アルファ)」を15年7月に開発。23年3月末時点で代理店導入率を約95%、新規契約時の利用率を約84%まで高めた。代理店に提供する業務管理システムで事故報告の約80%を受け付けており、保険金請求書はネットや電話による請求意思確認を行うことで約85%を省略。代理店の業務効率化と保険金の迅速な支払いにつなげている。

 保険料徴収のキャッシュレス化も進める。提携する家賃債務保証会社による保険料収納の強化に加え、クレジットカードや口座振替による決済を推進した結果、現金による契約の比率は約3%のみにとどまる。新規加入から退去時の解約までネットで完結する仕組みも含め、入居者の利便性を高めている。

 提供する家財保険「新バリュープラン」の保有契約数は3月末時点で27万1427件。他の保険商品も含めた3月期の収入保険料は31億6900万円となる。

全日ラビー少額短期保険、代理店の手数料精算を早期化

保証会社と組み、業務負担軽減

 公益社団法人全日本不動産協会(以下、全日:東京都千代田区)グループの関連団体・一般社団法人全国不動産協会(同)の完全子会社となる全日ラビー少額短期保険(同)は、2015年4月より営業を開始した。住居向け家財保険「全日ラビー住まいの保険」は、備え付けの特定設備や網入りガラスの損傷、自殺を含めた孤独死による損害まで補償する商品だ。谷政憲社長は「いずれも保険金の支払い対象として扱うことが難しかった事象。行政当局と交渉を重ね、丁寧にブラッシュアップしてきた」と商品の開発経緯を話す。

 代理店数は約3400社、保有契約件数は23年7月末時点で13万6159件。テナント向け保険を含めた3月期の収入保険料は12億6000万円となっている。

 同社は21年10月より、退去時の解約手続きを簡素化するために入居者専用ウェブサイトの提供を開始。退去日と返戻金を受け取る口座の情報を入力するだけで解約手続きが完了する。18年9月からは、代理店口座から正味の保険料だけを引き落として精算する方式を採用し、代理店の手数料受領を早期化した。家賃債務保証会社と連携し、代理店の契約・集金業務の負担軽減にも寄与している。

全日ラビー少額短期保険 谷政憲社長写真

全日ラビー少額短期保険
東京都千代田区
谷政憲社長(72)

 

 

あそしあ少額短期保険、ストーカー対策費用をセット

ALSOKと提携

 あそしあ少額短期保険(東京都千代田区)は、9月よりストーカー対策保険をセットにした家財保険「SECURITY CONCIERGE(セキュリティコンシェルジュ)」を提供する。

 警備会社大手のALSOK(アルソック:東京都港区)と提携して2020年4月から提供しているストーカー対策保険「and ME(アンドミー)」を活用した商品だ。通常の家財保険の補償に加え、警察からストーカーの当事者に対して警告やつきまといなどの禁止命令などが出された際に、ストーカー対策に関わる費用を入居者に補償する。

 具体的には、ストラップを引くことで緊急通報ができるALSOKのモバイル端末「まもるっく」を入居者に貸与。初期費用や月額料金などを補償する。そのほか、ALSOKの警備員が駆け付ける警護サービス費用やストーカー対策にかかるセキュリティー機器の利用料金、緊急避難が必要になった際の宿泊費用、引っ越し費用も保険内容に含まれる。

 あそしあ少額短期保険の本間貫禎社長は「初めて1人暮らしをする女性を想定し、パッケージ商品として開発した」と語る。

あそしあ少額短期保険 本間貫禎社長写真

あそしあ少額短期保険
東京都千代田区
本間貫禎社長(52)

 

(2023年9月11日8面に掲載)

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