不動産をデジタル証券化し、投資家に販売する不動産STO(セキュリティー・トークン・オファリング)の公募案件が拡大している。STOとは、ブロックチェーン技術により権利移転などを行うデジタル証券「セキュリティー・トークン(ST)」を発行し、資金調達を行う手法。不動産STOは、STの裏付け資産を不動産やその権利とする。
ケネディクス、134億円規模組成
不動産運用大手のケネディクス(東京都千代田区)は大型の不動産STOの組成を進める。4日には、物流施設を対象にした案件で投資家から約52億円を調達し、運用を開始したと発表。30日には野村証券(東京都中央区)を引受先とし、東京都中央区の大型賃貸マンションを裏付け資産とした公募額134億円の不動産STOの組成を予定する。
総合商社、三井物産グループの三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下、MDM:同)は7月28日に、京都市内のホテルを対象にした不動産STOの情報を公開した。同社自身が証券会社として、投資家への販売と、アセットマネジメント会社としての運用も行っていく。5月からスタートした資産運用サービス「ALTERNA(オルタナ)」上で、投資家がオンラインで申し込みや運用状況の確認ができるようにした。MDMの丸野宏之取締役は「当社における不動産STOの運用総額は200億円に達する見込みだ。投資家の需要に応えるためにも、継続的な案件の提供を進めていく」と話す。毎月1件のペースで組成を目指すという。
総合商社である丸紅グループの丸紅アセットマネジメント(東京都千代田区)は5月に、SBI証券(東京都港区)を引受先とし、都内の賃貸マンションを対象とした初の不動産STOの組成について発表した。
不動産投資会社いちご(東京都千代田区)のグループ会社、いちごオーナーズ(同)は、2022年11月に不動産STOの第1弾を販売。第2弾として、東京都内の賃貸マンション7棟を組み込んだ案件の運用を23年8月9日から開始した。
実物不動産、REIT(リート:不動産投資信託)、不動産小口化商品に次ぎ、新たな不動産投資の形として、不動産STOが存在感を示せるか。
(2023年8月21日1面に掲載)