荷物受け取りに対策必要【再配達削減へ 24年問題対策】

ライナフ,日本宅配システム,フルタイムシステム,リベロ

商品|2024年02月20日

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 働き方改革関連法による時間外労働の上限規制により、運送・物流業界で輸送能力の低下が起こり得る「2024年問題」。対策の一つとなるのが、荷物の再配達削減に寄与する住宅設備の導入だ。宅配ボックスの設置などにより、輸送効率の向上が期待される。

設備メーカー、商品充実へ

輸送能力に懸念 引っ越しにも影響

 4月1日より、トラック運転手などの時間外労働に年間960時間の上限が課せられる。働き方改革関連法に伴うものだが、懸念されるのが輸送能力の低下だ。経済産業省が公表している「持続可能な物流の実現に向けた検討会最終取りまとめ」によると、具体的な対策を取らない場合、2019年と比較した輸送能力が24年度には14%、30年度には34%不足する可能性があるという。

 引っ越し関連サービスを展開するリベロ(東京都港区)は24年1月、2024年問題の影響について、引っ越し事業者を対象にアンケートを実施。リベロが提供する、長距離の引っ越し案件などを事業者間で受発注できるサービス「HAKOPLA(ハコプラ)」に参画する143社を対象に行った。受注単価については、回答した企業の6割超が前年より「上げる予定」と回答。値上げの料金幅は平均で10%程度と見込まれる。1社あたりの受注件数も増加が予測される中、人材確保を進めていく方針の会社が多い結果となった。

リベロが実施したアンケートの回答結果

 転居においては、進学や転勤が重なる時期に、予算内で希望の日にちに引っ越しができない「引っ越し難民」の発生も社会問題となっている。アンケートではこの問題への影響についても聞いており、47%が「引っ越し難民の問題は深刻化する」と回答。23年の32%から大きく増えた。

 人手やトラックが不足する状況に歯止めをかけるものの一つが、荷物の再配達削減に寄与する設備だ。不在時でも荷物を受け取れる宅配ボックスや置き配サービスの導入が進んでいる。

2024年問題による物流・運送業界への影響

問い合わせ2倍 工場分散し対応

 2024年問題の影響は、宅配ボックスメーカーへの問い合わせ数にも表れている。宅配ボックス・宅配ロッカー事業者大手のフルタイムシステム(東京都千代田区)には、23年比で2倍の問い合わせが入っている。2024年問題を機に導入を決めた家主も出始めたという。

 同社は、再配達の抑制や宅配ボックスの管理のしやすさをコンピューター制御式宅配ボックスのメリットとして訴求しながら、設置数を増やす提案に注力。2024年問題についてわかりやすくまとめた配布資料も作成し、家主に宅配ボックスの導入提案を行う不動産会社をサポートする。

宅配ボックス導入の提案がしやすくなるよう配布している資料

宅配ボックス導入の提案がしやすくなるよう配布している資料(フルタイムシステム・フルタイムロッカー)

 BCP(事業継続計画)として、部品を複数社から購買することや、製造工場を関東と関西に分散するなど、宅配ボックスへの需要増に対応できる体制を整えている。同社が提供するコンピューター制御式宅配ボックス「フルタイムロッカー」は、23年12月末時点で全国5万847カ所で、57万1205ボックスが設置されている。

 賃貸住宅向け製品として「チャレンジボックス」を販売するのがグループ会社のフルタイムロッカー(神奈川県横浜市)だ。8年のリース契約で、月々のリース料に定期点検費用や部品交換代も含まれているため、万一の故障時も追加費用はかからない。

選定基準を明示 多様なサイズ用意

 日本宅配システム(愛知県名古屋市)には、再配達防止も含め、正しく荷物を受け取れる体制を構築するために心がけていることが二点ある。

 一つ目が宅配ボックスの選定基準となる最低限必要な機能を提案先に示すことだ。例えば、子どもの閉じ込め防止などの安全面に関する仕様や、コールセンターなどの体制面が整っているかを、別に他社を検討する場合も事前に確認するように促す。また、正しく物が届いたか、利用データを確認できる仕様になっているか、災害発生時などに倒れないような設計、設置になっているかも大事な基準だと提案先に伝える。

 二つ目が、世帯数に対して5割以上の割合になるよう、設置するボックスの数を増やしてもらう取り組みだ。ボックス数が少ないと、すべて使用されてしまい、再配達につながるケースが発生してしまう。「目安として5割以上を確保し、ボックスのサイズバリエーションも増やすことで、大半の再配達は防げるはず」(木本和良取締役専務執行役員)。実際に同社の導入実績として、平均世帯数に対する割合は4割以上となっている。

日本宅配システムの宅配ボックス

冷蔵品や鍵の受け渡しができるボックスもオプションで用意(日本宅配システム)

 23年6月には、大手配送会社の荷物規格を研究し、ボックスサイズを設計した「モノコンポプラス」の販売を開始。従来品の「モノコンポ」からボックスのバリエーションが増え、容量もアップしている。

導入1万棟突破 利用者8割好印象

 オートロックマンション向けに置き配対応サービスとして「スマート置き配」を提供するのがライナフ(東京都文京区)だ。21年3月からサービスを開始し、24年2月中には10都道府県の集合住宅など1万棟で導入される予定だ。

 同社では定期的に置き配に関する調査を行っている。23年7月に実施したサービス導入企業向けアンケートでは、すでに管理物件全棟で導入している企業を含め50%以上が置き配サービス導入に「前向き」と回答。また、同年4月の利用者向けアンケートでは、「次に住む物件も置き配に対応した物件がいいか」という質問に対して、80%以上が「いい」と回答しており、置き配サービスに対して好意的な意識がうかがえる。

 23年4月には、相次ぐ広域強盗事件を受け、事件を未然に防ぐために、警視庁と宅配大手の佐川急便(京都市)、日本郵便(東京都千代田区)、ヤマト運輸(東京都中央区)の3社が「置き配」を促進することで合意している。

(2024年2月19日8・9面に掲載)

おすすめ記事▶『出荷数、10年で7倍に【非対面で荷物受取 導入進む宅配ボックス】』

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