出荷数、10年で7倍に【非対面で荷物受取 導入進む宅配ボックス】
一般社団法人リビングアメニティ協会,日本宅配システム,田島メタルワーク,ユニソン,DOORCOM(ドアコム)
商品|2023年11月12日
通信販売の利用や新型コロナウイルスの流行による非対面での荷物受け取り需要の増加を受け、普及が進む宅配ボックス。機械式からスマートフォン連動型の電気式、各戸設置型まで、メーカー各社の製品を紹介する。
戸別型・スマホ連動型も
22年は前年比106%賃貸でも需要高く
住宅設備メーカーで構成される一般社団法人リビングアメニティ協会(東京都千代田区)が、宅配ボックスメーカーの会員企業12社を対象に行った調査によると、2022年度の宅配ボックスの出荷数は24万6564個だった。前年度比で106.4%、13年度比では716.4%となっている。
出荷数が前年度比250%を超えたのは17年度。同協会は「2018年版 住宅部品統計ハンドブック」で、宅配物の再配達削減対策としての認知向上と、国土交通省による宅配ボックス設置部分の容積率の規定が明確化されたことが影響したと分析する。
賃貸住宅の設備としても、宅配ボックスの需要は高い。全国賃貸住宅新聞が毎年行う賃貸住宅の人気設備に関するアンケート調査により作成した、単身者向け物件の「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」ランキングで、宅配ボックスは10年以上連続でトップ10入りしている。23年の同ランキングでは、単身者向け物件で4位、ファミリー向け物件で5位に入った。物流業界のドライバー不足が懸念される「2024年問題」も控える中、再配達削減の機運はさらに高まっている。宅配ボックスは、引き続き注目の設備といえるだろう。
玄関脇に取り付け居室から取り出し
日本宅配システム(愛知県名古屋市)は、セキュリティー面を重視した宅配ボックスとして「戸別宅配ボックス」を展開している。
各住戸の玄関扉脇などに設置する同製品は、玄関の内側に設置した受け取り用の扉から荷物を取り出す仕様だ。玄関扉を開けることなく、非対面で受け取ることができるため、宅配事業者を装った強盗など、見知らぬ人との接触を防ぐことが可能。それに加えて、荷物が入ると庫内の照明が点灯するなど、扉を開ける前に中に入っている荷物や安全を確認できる仕組みとなっている。
宅配ボックス自体は、大型郵便物に対応したポストと大小二つの宅配ボックスで構成される。二つの宅配ボックスの間にある棚を移動させて、ゴルフバッグなどを入れることもできる。木本和良取締役専務執行役員は「各住戸にさまざまな大きさの荷物に対応した戸別宅配ボックスを設置することで、再配達ゼロを目指し、配達先までの『ラストワンマイル』の効率化が可能だ」と語る。閉じ込めを防止するため、従来製品と同様に人感センサーなどの安全対策機能も標準で装備。冷蔵品などは従来どおり共有部の冷蔵用宅配ボックスなどで受け取る形になる。
宅配事業者らは日本宅配システムが開発した「入館システム」を利用して入館。同社が用意する入館システム登録管理センターを通じて事前に登録を行うことで、配達時の入館を許可するシステムも提供する。
木本取締役専務執行役員は「玄関扉を最終的なセキュリティーの防衛線と捉え、安全面を重視して開発した商品だ。安全かつ正しく荷物を受け取れるように、業界としてもしっかりとした基準を設けて商品を提供する必要があるのではないか」と話す。
4種を組み合わせ設置の専門部署も
郵便ポストなどのステンレス製品を販売する田島メタルワーク(東京都豊島区)の宅配ボックスの主力商品は「GX36」シリーズだ。
同商品は11桁までの暗証番号を設定できるプッシュボタン錠を使用した機械式宅配ボックス。屋内設置用の「GX36K」と防雨仕様で屋外設置可能な「GX36R」を展開する。ボックスのサイズは、高さ24cmから60cmまでの4種類。設置スペースや必要個数に応じて組み合わせることができる。幅と奥行きはいずれも同社の郵便ポスト「MX―8」などと同寸法で、集合郵便ポストの下にすっきりと設置できる設計だ。電気工事が不要で導入コストを抑えられる点から、中小規模の物件への導入が多いという。価格は6万6000円(税込み)から。
同社は既築物件への製品設置を担当する専門部署を持っている。要望があれば現地調査に赴き、イメージパースなどを作成して物件ごとに設置の仕方を提案。新規の宅配ボックス設置の問い合わせのほか、古くなった郵便ポストの交換の際にも宅配ボックス設置を提案している。技術開発部の矢部篤志部長は「最適な提案は物件によって違う。手間はかかるが、宅配ボックスを固定する壁の状態や雨風の影響も、現地を見ないとわからない」と話す。
同社は1992年から宅配ボックスの販売を開始。集合住宅向けには高さが最大180cmになる組み合わせ一体型を中心に提供していた。しかし、2017年ごろから宅配ボックスの認知が進み、十分な設置スペースがない物件からの需要も増えたため、20年にGX36シリーズを発売した。
特徴的な2色展開物件の個性演出
エクステリア関連製品の製造・販売を手がけるユニソン(愛知県豊田市)は、低層集合住宅向けに機械式の宅配ボックス「FLORIA(フロリア)」を販売している。
19年発売の同製品の特長は大きく分けて三つある。一つ目は、屋外設置が可能な防雨設計の機械式宅配ボックスである点。屋内外を問わず設置することができる上、設置時の電気工事や月々の電気代が不要なので、導入費用が抑えられる。
二つ目は、ボックスの組み合わせの柔軟さだ。宅配ボックスのみであれば2個から、宅配ボックスに合わせたデザインの郵便ポストとのセットは、宅配ボックス2個・ポスト4個の組み合わせから購入可能。設置スペースがあまり確保できない場合にも導入しやすい。屋外に設置するケースのほか、元々宅配ボックスの設置用スペースを用意していなかった10戸から20戸程度の小規模な既築物件に採用されるケースが多いという。
三つ目はデザイン性の高さだ。化粧シート貼りの表面仕上げで「マットブラック」と「ウォールナット」の2色を展開。ホワイトやシルバーといった定番色では満足できない、物件の外観にこだわりのあるオーナーなどから引き合いがある。
価格は宅配ボックス2個のユニットで22万4400円、郵便ポスト4個と宅配ボックス2個のユニットで45万9800円(いずれも税込み)だ。カタログ掲載のユニット以外の組み合わせについても、相談に応じる。
DOORCOM、顔認証でスムーズに解錠
利用状況を専用アプリで確認
IPネットワーク対応型インターホンを提供するDOORCOM(ドアコム:東京都港区)は、電気式宅配ボックス「スマート宅配ボックス」を年内にリニューアルする。
リニューアルでは三つのアップデートを行う。一つ目は解錠方法の追加だ。入居者はICカードと暗証番号に加え、顔認証で解錠し、荷物の受け取りができるようになる。
入居者に向けたサービスの実装が二つ目の追加機能だ。宅配ボックスの利用状況を確認できるアプリを開発。入居者は荷物の配送状況や保管状況の確認、宅配ボックスの解錠方法に関する通知を受け取ることができる。
三つ目として、不動産会社向けの管理システムの提供も開始。遠隔でも宅配ボックスの利用状況の確認や暗証番号の変更を行うことができるようになる。管理システム以外にも、宅配ボックスの管理業務の代行サービスを展開していく予定だ。これにより、管理会社の業務負担を削減する。
DOORCOMはIPインターホン「Akuvox(アキュボックス)」やスマートロック、防犯カメラなどのセキュリティー商品や入居者向けの入退室管理アプリ「Akuvox SmartPlus(スマートプラス)」を提供。リニューアルにより、スマート宅配ボックスは同社が提供するインターホンと完全に連動するため、高いセキュリティー性能を持てるようになる。
(2023年11月13日8面に掲載)