コロナ禍の影響、給湯器の供給不足が深刻に

高山不動産, キンライサー, 大問屋, 住研川越

統計データ|2021年12月13日

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冬が本格化するにつれて給湯器の交換は繁忙期を迎えることになる

 繁忙期を前にして、給湯器不足が深刻化している。新型コロナウイルス感染症の影響でサプライチェーンに支障が発生し、中には繁忙期真っ最中の2022年3月まで供給のめどが立たないメーカーも出てきているようだ。賃貸住宅業界への影響について、給湯器の設置・交換を行う会社と管理会社に話を聞いた。

一部メーカーは22年3月まで納品間に合わず

納期の遅れは9月ごろから

 繁忙期を控えて、退去後のリフォームのタイミングや冬に給湯器が故障したときに交換ができないのは厳しいと警戒するのは、金沢市内を中心に1232戸を管理する(21年3月時点)高山不動産(石川県金沢市)だ。PM課の木原健治課長は「一部メーカーの給湯器の供給が22年3月ごろまでめどが立たないと聞いた」と話す。

 実際、給湯器不足はどれほど深刻なのか。

 年間3万件を超える給湯器交換を行っているキンライサー(東京都港区)では、エコキュートは6月中旬から、ガス給湯器は9月中旬から供給不足の影響が出始めたという。佐藤公治常務は「9月中旬からは全く入荷されない商品もあり、10月に入ってからは入荷未定の商品数も多くなっている」と窮状を語る。

 同社では、約2年前から東西に物流倉庫を構え、在庫を抱える戦略を取ってはいたものの、対処しきれない状況だ。「供給不足の解消時期は、商品の種類によるが、ガス給湯器であれば22年3月以降。エコキュートは全く先が読めない。新たに大きな問題がなければ、正常化は22年8月以降になるかと思う」(佐藤常務)

 年間約1万5000件の給湯器交換を行う大問屋(東京都大田区)では、8月の盆明けから、従来は1~2日だった納期が7~10日に伸びるといった納期遅れが始まったという。9月には納期が1カ月となり、現在は22年3月まで伸びている状況だ。

 工事依頼に対して3割分ほどしか在庫を用意できていない。工事を断らざるを得ないユーザーには、空室の給湯器との入れ替えや、在庫商品の仮設などを提案しているが、対応しきれないケースも多いという。

 浅岡朋宏社長は「工場がある地域のロックダウンが解除されたということで供給が戻るという話が一旦は出たものの、結局は白紙になった。正常化は22年夏まで引っ張りそう」と話す。

故障時の対応模索 空室や銭湯利用提案

 給湯器供給が追い付かない中、管理会社はどのように対応しているのか。

 前出の高山不動産では、二つの対策案を用意している。一つは仮付け交換を含め交換対応可能な業者を手あたり次第探すこと。もう一つは管理物件の空室に設置された給湯器を使った部品交換対応を検討することだ。また、交換に間に合わない場合には、同社負担で銭湯を案内するか、同じ棟内の空室に電気、ガス、水道を通し、臨時利用することを検討している。実際に交換が間に合わなかった事例は今のところ起きていない。

 同社のPM課の木原健治課長は「交換や修理が間に合わない際のオペレーションは想定しているが、銭湯への案内にしても、コロナ下で外出を避けたい入居者がいることが予想され、スムーズに促せるか懸念している」と語った。

 川越市を中心に約3000戸を管理する住研川越(埼玉県川越市)では、建築・リノベーション予定の物件について予定通りの納品が難しいという事態が起きている。供給不足が始まったのは9月ごろだという。同社における給湯器の交換・修理件数は例年だと11~1月がピークだという。

 経営サポート部の加藤木康弘部長は、「不足解消の見込み時期は不明。ガス会社から22年4月以降納品予定との連絡があったため、設備交換会社などで抱えている在庫を優先的に回してもらえるよう依頼している。また、冬場の給湯器破裂防止のため、退去時の水抜きはこれまで以上に徹底し、交換にならないよう努めている」と話す。

 さまざまな製品・部品の生産を海外に依存する状況下で、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響は各所に表れている。各メーカーの生産拠点を把握し、現地の情報いち早く掴み、在庫を確保しておくなど対策を打てるようにしておきたいところだ。

大問屋 浅岡朋宏社長の写真

大問屋
東京都大田区
浅岡朋宏社長(52)

 

(2021年12月13日24面に掲載)

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