全国に200店舗以上の直営店を展開する賃貸仲介大手のハウスコム(東京都港区)に、都市中心部の来店客動向を聞いた。関東、関西地域ともに中心部エリアでは、2022年9月以降、サービス業の採用状況に変化が起こり、需要が回復したようだ。
採用市場の変化が影響
―22年の東京都内中心部の店舗の状況は。
22年9月ごろから、都内中心部の需要が復活した。具体的には、池袋、目黒、高円寺など、新型コロナウイルス禍中に人気が下がっていたエリアの人気が戻ってきた。20、21年は、リモートワークの急速な普及により、郊外の需要が高まった。家賃が1万円以上上がった地域もあったが22年以降は落ち着いている。
―都内中心部の需要が復活した要因は。
単身者の居住ニーズが、都内中心部に戻った。サービス業などでは、コロナ禍による時短営業の要請を受けて、運営時間の短縮、または閉めていた店舗が営業を再開した。これにより、店舗で働く人たちの住まい需要が戻ってきたと思う。求人情報を見ていると、飲食店を中心に募集が増えている。大量募集する飲食店もあり、新店舗オープンに伴い、新しい従業員を雇用する企業も増えているようだ。
―都内中心部の家賃帯に変化は。
20、21年は、都内中心部の物件で空室率の上昇が目立ち、家賃が下がる現象が起きていた。郊外や地方に移住する人が増え、都内中心部の人気が下がっていた。現在は、空室率が改善し、家賃帯も19年の水準に戻った。今後さらに上がっていくと予想している。
―関西圏の市況はどうか。
関西地域も首都圏と同じ動きをしている。22年9月ごろから、大阪市内中心部の需要が復活した。大阪市北区の梅田周辺、天神橋筋六丁目、本町といった地域だ。コロナ下では、神戸市三宮地域、京都市中心部の空室も目立ち、かなり厳しかった。現在では、どの地域においても中心部の人気は戻っている。
―関西中心部の需要が復活した要因は。
観光業の復活が大きく影響しているだろう。東京都と同じく、飲食店などの再開による回復もあるが、京都市エリアを中心に、観光業に従事する層が戻ってきた。あるいは、新たに観光需要を狙った事業を始める層も増えたのではと思う。
―全国的に見て、どのようなエリアの人気が高いか。
一極集中ではなく、人気が多様化していると感じる。以前は、繁忙期に中心部の新築の単身者向け物件を用意していることが多かった。しかし、間取りが広めな郊外エリアの物件の人気は、落ち着いたとはいえ、希望する人は一定数存在する。顧客のニーズが多様化しているので、要望に応えるために、当社では用意する物件数を増やしている。また、ITを活用した重要事項説明やオンライン内見といった選択肢も増やした。
ハウスコム
東京都港区
サービス・イノベーション室
西山玲児さん(43)
(2023年4月10日18面に掲載)