契約期間内に解約不可の契約の有効性

【連載】新・法律エクスプレス 第19回

法律・制度改正|2022年03月01日

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 通常2年間の賃貸借契約を賃借人と結んでいますが、新しい賃借人は転勤族のようです。私は2年間の賃料収入を見込んで生活設計をしているため、契約に、「賃借人からの途中解約は不可とする。途中解約する場合は、残賃貸借期間の賃料を支払わなければならない」との条項を設けたいと考えていますが許されるのでしょうか。

賃借人の契約内容の認識有無が要点

 賃貸借契約において、賃貸借の期間を2年間と定めるなどした場合は、民法上、「期間の定めのある賃貸借契約」とされます。

 「期間の定めのある賃貸借契約」において、賃貸借期間の途中における解約を禁止する条項を定めることや、途中解約する場合に、残りの賃貸借期間に応じた賃料相当額の支払い義務を定めることは、基本的には適法であると考えられています。

 当事者は公序良俗などに違反しない限り契約内容を自由に決めることができ、自らの意思で契約を締結した以上、当事者は契約に拘束されるのが民法の原則であること、また、契約した時点で、賃貸人において契約期間に相当する賃料収入を得られる期待が存在し、その期待を保護すべきであることなどが理由に挙げられます。

 もっとも、賃貸人・賃借人がこのように契約に拘束されるのは、賃借人が契約の具体的な意味内容を正しく認識していることが前提となりますので、賃借人が当該条項の存在を知ることができなかった場合や、賃貸人から契約内容と異なる説明を受けていたなどの場合は、例外的に、賃借人は契約に拘束されず、賃借人からの途中解約が認められる可能性があります。

 さらに、賃貸借期間が長く、残りの賃貸借期間との関係で、このまま契約を継続すると賃借人に酷である場合や、契約時には予測困難だった事態が事後的に発生し、契約継続が著しく困難といえる場合にも、例外的に、賃借人からの途中解約が認められる可能性があります。

 これらの場合、賃借人を契約に拘束することが公序良俗などに反すると考えられるためです。

 どのような場合に、賃借人が契約に拘束されず賃借人の途中解約が認められるのかは、総合的に判断する必要があります。

 「期間の定めのある賃貸借契約」で、質問のような条項が定められていない場合、判例では、賃借人からの途中解約は認められないと判断がされています。

 それは、民法上、期間の定めのある賃貸借契約において、途中解約を予定していないと解釈されること、契約の拘束力により、質問のような条項を定めていない以上、賃借人は、約定の賃貸借期間に拘束されると考えられることなどが理由になります。

 契約内容を検討する段階で、質問のような条項を定めるべきなのか、定めるとして、例外的に賃借人からの途中解約が認められるのはどのような場合なのかなどについて、弁護士に相談して具体的に検討するといいでしょう。

 

森田 雅也 弁護士の写真

森田 雅也 弁護士

上智大学法科大学院卒業
2008年弁護士登録
2010年Authense法律事務所入所
年間3000件超の相続・不動産問題を取り扱う

(2022年2月28日15面に掲載)

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