売買・修繕の提案ツールにも【家主との関係を強化 オーナーアプリ】
WealthPark(ウェルスパーク),UPDATA(アップデータ),GMO ReTech(リテック),のうか不動産,いい生活,L&F,土地活用
商品|2023年09月26日
オーナーとのやりとりで利用が進みつつあるオーナーアプリ。郵送費削減や業務効率化などの効果が期待でき、オーナーへの提案ツールとして活用も増えている。本特集では提供会社5社を紹介する。
導入後の運用支援し活用促進
サポートを充実 160社で利用
WealthPark(ウェルスパーク:東京都渋谷区)は、2017年よりオーナーアプリの「WealthParkビジネス」を提供している。23年7月にUPDATA(アップデータ:同)から事業譲受したオーナーアプリ「OwnerBox(オーナーボックス)」を含め、8月末時点で管理会社160社、8万人のオーナーの利用実績がある。
オーナーへの収支報告、入居募集や退去などの報告・承諾、チャット機能などがある。導入企業には専任の担当者がつき、管理会社・オーナー双方がアプリを使えるよう導入プランを策定。オーナーのアプリの導入率や定期的な利用率を指す「アクティブ率」などの指標を設けて、具体的な施策や実施スケジュールを提案する。
有償オプションとして、オーナーに電話で直接アプリの利用を促すコールセンター業務も行う。WealthParkが架電リストを精査し、アプリのダウンロードや操作方法などを管理会社に代わりオーナーに説明する。
管理会社側における利用目的や活用方法の浸透についても支援。管理会社とオーナーのコミュニケーションを可視化することで、組織全体に情報や状況を共有できる体制を構築する。さらに利用オーナーに対する売買提案や、オーナー紹介キャンペーン実施などのノウハウ提供も行う。そのほか、導入企業同士の事例共有や導入検討企業の不安を解消する機会もつくる。
鳥谷拓真執行役員は「オーナーアプリを単なる収支報告などの報告ツールではなく、提案ツールだと捉えている。オーナーと管理会社双方が有益なアプリとして活用できるよう、サポート体制を充実させ、新たな機能開発を進める」と語る。
アプリ10万DL 書類郵送廃止も
GMO ReTech(リテック:同)は20年12月から、「GMO賃貸DXオーナーアプリ」を提供している。23年8月末時点において管理会社約100社で導入。アプリのダウンロード数は10万件を超える。
主な機能は、①賃料の収支報告や物件の稼働状況の確認②チャット形式による、管理会社からオーナーへの連絡③原状回復工事などオーナーへの提案に対し、素早く承認を得るための「ワークフロー機能」がある。管理会社の社員が外出先からでもオーナーと連絡を取りやすい点がアプリの強みだ。
オプション機能で、物件の定期巡回報告書作成や、「大規模修繕診断機能」でオーナーへの修繕提案をすることもできる。ゴルフ場や飲食店が予約できるオーナー向けの「ロイヤルティ機能」も搭載している。アプリ上での電子契約やクレジット決済機能も追加可能だ。AI(人工知能)の活用にも注力しており、8月31日には約100言語に対応した「AI翻訳機能」を追加した。
同社では、不動産会社が同アプリを導入後、オーナーがアプリをダウンロードする際のサポートをはじめ、スムーズな運用ができるようCS(カスタマーサクセス)チームを設けている。積極的にオーナーアプリを活用するのうか不動産(石川県金沢市)では、すでに6~7割のオーナーがアプリを利用しており、25年1月をめどに、収支報告書の郵送廃止を目指しているという。
スマートフォンを持たないオーナーのためにウェブ版も提供する。
約24%が60代以上 リマインド機能も
不動産会社へクラウド型の基幹システムを開発・提供するいい生活(東京都港区)が提供するオーナーアプリは、「いい生活Owner(オーナー)」だ。管理会社とオーナーのコミュニケーションを円滑にするサービスとして、20年4月から提供されている。約200社、約1万人に利用され、その内訳はアプリが7割、ウェブ版が3割だ。
同サービスの主な機能は四つ。①チャット形式でのオーナーへの報告や連絡②家賃の月次報告書の送付③物件の修繕や清掃箇所を動画や画像で報告④掲示板のようにオーナーへセミナーなどを案内するお知らせ機能など。
管理会社の業務の進捗(しんちょく)が滞ってしまう理由の一つに、オーナーと円滑にコミュニケーションが取れないことが挙げられる。同サービスでは、オーナーが不動産会社からの連絡に対して承認・非承認をワンタップで簡単に返答できたり、期限内に返答がないメッセージへのリマインドを行うことができるなど、オーナーに使いやすい工夫が充実している。
不動産会社、オーナー双方の利用環境に合わせてウェブ版やアプリ版を提供し、スマホのほかタブレットでも利用できる。いい生活以外の会社の基幹システムを利用している不動産会社でもCSV形式のファイルとの連携などを活用して、同サービスを利用することが可能だ(システム連携は要見積もり)。
同サービスの導入における不動産会社の声として、「高齢のオーナーの利用が進まないのでは」「アプリの導入で手間が増えるのでは」という声が聞かれる。しかし同社の年代別アプリ利用者は、60代以上の利用者が全体の23.7%。オーナーとのやりとりが完了するまでの平均日数は63%が当日中、平均チャット数も1日1~3回までが77.6%となっている。平時の連絡だけでなく、地震など災害発生時のインフラツールとして活用される事例もあるという。
基本業務を網羅 操作性の高さ好評
不動産会社の業務支援サービスを展開するL&F(千葉市)は18年3月より、オーナーウェブアプリ「オーナーズクラウド」を提供している。
管理会社がオーナー向けのマイページを作成し、報告事項や見積もりの承認、イベントの通知などのオーナーとのコミュニケーションをウェブ上で行えるアプリだ。
主な機能は五つ。一つ目は、収支報告書や定期清掃報告書を写真・動画付きで送る「レポート配信機能」。二つ目は、チャット形式でオーナーとやりとり可能な「コミュニケーション機能」。三つ目は、工事などの見積もり確認・承認の依頼を行う「リクエスト機能」。四つ目は、オーナーへの連絡事項などを一斉通知する「お知らせ配信機能」。五つ目は、定期清掃などを委託する外部事業者が作業報告する際、操作権限を限定して付与する「社外ユーザーアカウント機能」。そのほか、オーナー向けマイページの色や背景画像を変更して自社の独自性を出せる「デザインカスタマイズ機能」も好評だという。
管理会社が登録できるID数やオーナー登録数は無制限で、初期登録料は5万5000円、月額基本利用料は2万7500円(いずれも税込み)。写真や動画などの保存容量が100GBを超えた場合は別途の月額追加利用料がかかる。システムは完全自社開発で、賃貸管理業界出身者が設計を担当。サポートの必要が少ないシンプルな設計と営業コストの削減で、利用しやすい価格を実現している。
営業企画推進部の小栗直子部長は「導入検討企業へのデモでは、直感的な操作性を評価されることが多い。今後も管理会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に貢献していきたい」と話す。
土地活用、イベント通して人脈づくり
不動産事業者向けSNS
建築マネジメント事業を手がける土地活用(東京都港区)は、3月31日よりオーナー・不動産会社向けの交流アプリ「不動産人脈DX」を提供している。
プロフィル機能やタイムライン投稿機能のほか、売買物件の情報掲載や交流イベントへの参加申し込み機能を搭載するSNSだ。人脈は通常、セミナーなどのビジネスシーンを通して構築することが多い。同アプリはプライベートな「遊び」の交流を通して新たな人脈の構築や情報交換を促し、ひいては不動産ビジネスを発展させる。オーナーは同アプリ上で、不動産会社やほかのオーナーとの交流、物件の内覧会やゴルフコンペティションキャンプ、ヨット乗船など、土地活用やアプリ会員が企画した交流イベントに参加することができる。
9月5日時点のアプリ会員数は約100人で、オーナーが4割を占める。利用料金は月額1950円(税込み)。2025年まで初月は無料となる。
今冬には同アプリの機能拡張のため、アップデートを行う予定だ。タイムライン上で同じ趣味や目的を持つユーザー同士でやりとりできるコミュニティー機能を実装する。
越川健治社長は「遊びを通して豊かな時間を楽しみながら同業他社と交流できるよう開発した。新しい人脈を構築したいユーザーに向け、さまざまなイベントを提供していきたい」と語る。
(2023年9月25日11面に掲載)