自動車部品製造の技術生かす
提供開始から40年
賃貸住宅市場において、新築物件を中心に導入が進むスマートロック。従来の鍵管理の在り方を覆す画期的な製品として関心を集めているが、各メーカーが販売し始めた当初の印象は決していいものではなかった。「本体を固定する両面テープが剝がれて玄関に落ちていた」「配線を接続するための施工で多額のコストがかかる」。オーナーや管理会社の投資意欲は「前向き検討」から「様子見」へと変わった。
そのスマートロックが、製品の改良や管理効率向上の必要性を背景に、再び勢いづいている。機運の上昇をけん引する企業の一つが2023年に創業100周年を迎えたアルファだ。従来より展開している自動車部品製造事業にて培った高い錠製造の技術力を生かし、賃貸物件向けのスマートロック「edロック」シリーズを開発・提供している。
同シリーズの第一世代となる商品は、1984年に開発された。電池式のため配線の接続が不要。ドライバー1本で錠前に固定でき、10分ほどで設置が完了する。2023年12月5日時点で第7世代となる「edロックPLUS(プラス)」まで進化しており、時代に合わせて機能を拡張してきた。その結果、シリーズ累計の販売台数は100万台を突破した。
住宅機器事業部営業部の原田昌司次長は「製品改良の際に重要視しているのは、導入している企業の声だ」と語る。管理会社からの主な要望は、管理のしやすさや解錠方法の拡充、新たな収益モデル構築への活用だった。
改善においては二つの取り組みを実施。一つ目は管理をより容易にするため、使用する電池を変更した。第6世代ではカメラ用のリチウム電池を利用していたが、入手しやすい単3乾電池で駆動するようにした。二つ目として暗証番号以外にもICカード、「おサイフケータイ」での解錠方法を追加した。ICカードは各管理会社が専用のものを入居者に販売する形で収益化への要望に応えた。それに加えて、1cm程度のシールに鍵の機能を持たせた「シールキー」も開発。入居者が所有する小物に貼り付け、edロックにかざすことで解錠を可能にする。
厳しい審査を実施
edロックPLUSではセキュリティー性や耐久性について厳しい審査基準を設けている。「当社はシリンダー製造事業で会社を興し、これまで専業で鍵の製造を行ってきた。それゆえに鍵の本来の役割であるセキュリティー性が、どのような状況においても機能することを重視している」(原田次長)。通常の住宅用鍵の耐久試験よりも厳しい審査を実施しているのはその理由からだ。設置環境において、一般的なスマートロックは0~60度まで耐え得るが、「当社の経験から鑑みて不十分」(原田次長)として、独自に全国各地の寒冷・温暖な気候に対応できる仕様にしている。
一時解錠にも対応
「ワンタイムパスワード」による一時的な解錠に対応する機種「edロックPLUS―OTP」も提供する。管理会社は専用システムから解錠用パスワードを発行。有効期間は1時間、4時間、1日、1週間、30日間、60日間から選択できる。内見時の鍵の受け渡しを省くことができるほか、入居者が1人で内見を行う「セルフ内見」も可能になる。加えて入居者が第三者へデジタルキーを発行することができる「edロックPLUS―BT」も提供。スマートロックを提供するビットキー(東京都中央区)が展開するプラットフォームと連携し、スマートフォンでの施解錠や状態確認、遠隔でのデジタルキー発行に対応する。
今後は新築だけでなく、既築物件への提案にも注力していく。「既築物件の管理会社・オーナーはスマートロックを見たことがないケースもある」(原田次長)。管理会社には同商品の導入メリットを訴求できるような取り組みを実施する。
EC(電子商取引)サイトでの販売も展開中で、一般顧客のほか、賃貸住宅のオーナーからの注文も入る。施工不良や万が一の不具合に対し、自社スタッフによるサポート体制を整え、edロックシリーズのさらなる普及にまい進していく。
(2024年1月1・8日32面に掲載)