新商品の発売により製造終了となってカタログから外れる廃番品。ディスプレー大手の丹青社(東京都港区)は、メーカーと協力して廃番建材を安価で販売するサービスをつくり、廃棄物の削減を目指す。
未使用正規品、安価で販売
新品床材8割引も
壁紙や床材、照明器具、家具などのインテリア、室内でグリーンを演出する造花。商業施設などの空間デザインを手がける丹青社が2021年4月から運営する建材・装飾材の廃番品専門EC(電子商取引)サイト「4earth(フォーアース)」には、幅広い種類の内装建材・インテリア商品のカテゴリーが並ぶ。商品にはいずれも定価からの割引率が記載されている。中には「85%OFF(オフ)」の文字もある。
タイルカーペットからフローリングまで、多様な床材が掲載されている
4earthでは、新商品の発売に伴い販売中止になった廃番品の建材をメーカーが出品し、定価より安く販売する。24年1月18日時点の商品数は828種類、出品メーカーはサンゲツ(愛知名古屋市)、東リ(兵庫県伊丹市)など約40社。出品される建材には現行品と同等のメーカー保証が付いている。
事業開発センター事業開発統括部の野本康仁部長は「カタログには載っていないが、メーカー保証も付いた新品がリーズナブルに購入できる。建材を選ぶ際の選択肢の一つとして廃番品を定着させていきたい」と話す。
取引先に協力依頼
事業を立ち上げた目的は、ディスプレー業界全体の課題である産業廃棄物の発生を抑制し、二酸化炭素(CO²)排出量を削減することにある。20年ごろからSDGs(持続可能な開発目標)達成のための活動が活発化する中で、企画開発センターの真家聡シニアプランニングディレクターは、メーカーと協力して廃棄物削減に挑む4earthのアイデアを考案した。メーカーへのヒアリングでは廃番品を表立って出品することへ抵抗感を示す声も聞かれたものの、メーカー10社からの賛同が得られ、事業開始にこぎつけた。
「各メーカーはこれまでにも廃棄建材のリサイクルなどに取り組んできていた。それでも出てしまう廃棄物を少しでも減らしたいというのは、私たちを含め各社に共通していた考えだ。本業の空間デザイン事業で多くのメーカーと協業してきたからこそ、メーカーの垣根を越えたサービスを形にすることができた」(真家シニアプランニングディレクター)
事業を推進する野本康仁部長(左)と真家聡シニアプランニングディレクター
リノベで利用多数
4earthの利用者数や売上高は非公開だが、いずれも開始以来、順調に伸びているという。利用者の属性は、自宅や賃貸物件のDIYを行う個人やリノベーション事業者など。特に継続的に利用するケースが多いのは、空き家をリノベする事業者だ。野本部長は「資材や人件費の高騰で、建築コストは上がり続けている。廃番品といっても、一度も使われていない新品が安価で購入できる点が評価されているのだろう」と分析する。丹青社がデザインを手がけるホテルや商業施設のバックヤードで4earthの商品を使う例もあり、本業とのシナジー効果も生まれ始めている。
23年12月からは「ソリューション提案」というサービスを開始した。4earthで購入できる建材を利用したリフォーム・リノベのプランを提供する。利用者が、建材を使いたい部屋の間取りなどの情報を送ると、丹青社が壁紙や床材、照明器具などをトータルで選定し、品番や購入量、金額の概算書を送付する。「今後も魅力ある商品やサービスを追加していくことで利用者を増やし、廃棄物の削減に寄与していきたい」(野本部長)
(2024年2月26日9面に掲載)
