子育て世帯、住宅融資控除優遇【クローズアップ】

税理士法人タクトコンサルティング

法律・制度改正|2024年01月18日

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 「令和6年度税制改正大綱」が2023年12月に公表された。不動産領域において子育て支援や環境配慮をキーワードにした内容が目立った。不動産ビジネスに関係するポイントについて、専門家が解説する。

令和6年度税制改正大綱、発表

ファミリーに配慮 改修費を軽減

 与党は23年12月14日に、令和6年度税制改正大綱を発表した。不動産ビジネスに関わってきそうな内容は、①子育て世帯向けの住宅ローン・改修費控除の優遇②賃貸住宅家屋の固定資産税・都市計画税の減額措置③固定資産税の負担調整などの措置延長④飲食費などの交際費の経費算入額引き上げの四つだ。

 一つ目の子育て世帯向けの住宅ローン・改修費控除の拡充について、まずは住宅ローン控除を見ていく。

 24年中に入居した場合、控除額の基になる借入限度額が23年中の入居に比べて500万〜1000万円下がる。この条件に該当する子育て世帯らが24年中に入居した場合には、23年入居時の借入限度額を維持する内容となった。

 本人が40歳未満で配偶者を有する者、本人が年齢40歳以上で年齢40歳未満の配偶者を有する者、または年齢19歳未満の扶養親族を有する者が新築や再販物件を購入して24年中に入居すると、借入限度額は最大で5000万円になる。

 借入限度額が最大5000万円になるのは、長期優良住宅や低炭素住宅として認定された物件。ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の住宅は最大4500万円、省エネ基準適合住宅は4000万円となる。

 税理士法人タクトコンサルティング(東京都千代田区)の山崎信義税理士は「要件に該当する人は一部。住宅購入の呼び水になる内容であるかは疑問だ」と話す。

 改修費用については、24年中に既存住宅で子育てに対応するために改修工事を行った場合、250万円を限度とした工事費用相当額の10%を、該当年の所得税から控除することができる。

 対象となる工事は、子どもの事故を防止するための工事、対面キッチンへの交換工事、開口部・界壁・床の防音性を高める工事などだ。

住宅性能を重視 減税の条件化も

 二つ目は賃貸住宅家屋の固定資産税の減額措置だ。新築住宅への固定資産税の減額措置が、26年3月31日まで2年延長される。

 集合賃貸住宅の場合、土地の面積が40〜280㎡までの新築であれば、新たな課税年度から3年度分、120㎡に相当する分の税額を2分の1に減額する。

 「従前の延長ではあるが、注意したいのが、今後、賃貸住宅においても、環境性能の高い住宅の規格を引き上げ、その条件を満たす物件をより大きな減額措置の対象とする動きが出てくる可能性があることだ」(山崎税理士)

 環境配慮型住宅の供給を重視する国の方針を踏まえると、賃貸住宅のオーナーは、新しい物件の建築を検討する際、住宅性能の高い省エネルギー物件であることを考慮したほうがいいという。

 三つ目は、固定資産税・都市計画税の負担調整などの措置延長。24年度から26年度までの3年間は、固定資産税の負担調整の仕組みと地方公共団体の条例による減額制度が継続される。

 制度自体に変化はないが、24年は3年ごとの土地の固定資産税評価額の評価替えが行われる。自分の所有する土地の評価額が気になる場合には、市区町村役場に行き、所有する土地の24年以降の評価額を確認するのも一つの手だ。

飲食費、引き上げ 対象は法人のみ

 四つ目が、飲食費などの交際費の経費算入額の引き上げだ。

 「不動産賃貸業を営む法人でも活用することができる」と山崎税理士はコメントする。経費計上可能な、交際時の飲食費を従来の5000円以下から1万円以下に引き上げた。24年4月1日以降の支出分に適用される。適用期限も3年間の延長となり、27年3月31日までとなる。

 覚えておきたいのは、今回の改正の対象を法人に限定している点だ。不動産オーナーが個人で行う不動産賃貸事業については、所得税の計算上、業務に関連して支払う交際費は、行き過ぎなければ経費として計上することができる。

(河内)
(2024年1月15日20面に掲載)

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