ビレッジハウス・マネジメント(東京都港区)は、管理物件の入居者が入居申し込みに至るまでの流入経路を分析する。広告費全体の7割を占める、ウェブ広告の出稿先を決める材料として使うためだ。その結果、新規入居者を獲得する広告の確度を高めることができている。岩元龍彦CEOに話を聞いた。
流入媒体ごとの属性を把握 広告出稿先の選定材料に
―DXとしてどんなことに取り組んだか。
大きく3つのことに、取り組んできた。1つ目は、Salesforce(セールスフォース)を導入し、入居者情報を一元管理した。2つ目は、全国で直接雇用している、平均年齢67歳の物件管理スタッフ約550人にスマートフォンを貸与し、紙の報告書を廃止した。3つ目は、仕事マッチングアプリを使い、クラウドワーカーに物件の清掃を依頼し、定期清掃の効率化を図った。
―顧客管理のDX化によるメリットは。
約7万人の入居者データを一元管理することで、流入元の広告媒体や入居者属性などを、ひも付けできるようになった。そのため、広告投資先を決めるための参考資料となり、より戦略的な広告出稿が実現した。広告費全体の7割をウェブ広告へ割り当てている。集積したデータから、エリアや物件ごとの入居者の属性が分かるようになった
―管理スタッフへのスマートフォン貸与にはどういう効果があったのか。
以前の物件管理スタッフは、事務所に出社後、社用車で担当物件を巡回し、事務所に戻ってから紙書類をファックスで送付するという報告業務を行っていた。現在は本部との双方向でのコミュニケーションを大切にするために、ビジネスチャットツールを導入した。必要な報告を写真付きで伝えられるため、即時的な連絡ができるようになった。
―スタッフの操作に問題はおきなかったか。
平均年齢67歳の管理スタッフは、スマートフォンの操作自体が初めてという人も多かった。複数回の説明会などを通じて操作方法を学んでもらった結果、今では細かな連絡も写真付きで送られてくる。ペーパーレス化と同時に双方向間のコミュニケーションが深まった。
―クラウドワーカーによる定期清掃で変化はあったか。
元々、入居者自身が運営する自治会によって清掃を行っていた。しかし、高齢化や人員の減少で清掃作業が回らなくなっていた。そこで、地域住民を中心に仕事のマッチングアプリを通じて清掃スタッフとして雇用した。2~3カ月に1回の清掃から、最低月1回の清掃ペースを確保できた。
―今後、導入を検討しているDXシステムは。
原状回復工事の管理システムを開発中だ。管理物件は、築年数が経過した古い物件が多い。これまで、5年間で5万6000戸の修繕工事を行った。工事件数が多いため、正確にコストと品質のコントロールを行う必要がある。そこで、全国の修繕工事依頼のデータを登録し、管理するシステムの構築を予定している。築年数が古い物件が多いため、設備不良の内容が複雑であるのも、自社開発することにした要因だ。「網戸がない」「お湯が出ない」「ふすまが破れた」といった詳細なデータを蓄積するには自社で開発したシステムでなければ管理しにくい。11月にサービスを開始する予定だ。
ビレッジハウス・マネジメント
東京都港区
岩元龍彦CEO
ビレッジハウス・マネジメント
フォートレス・インベストメント・グループの傘下にあり、全国に約10万戸の旧雇用促進住宅を管理する。
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(2022年10月10日15面に掲載)