電鉄が首都圏で賃貸ビジネス加速

JR3社が新たな収益の柱として、賃貸住宅の獲得に力を入れている。東日本旅客鉄道(以下、JR東日本:東京都渋谷区)は、グループでの賃貸住宅保有3000戸を目標に掲げて動きだした。九州旅客鉄道(以下、JR九州:福岡市)は、牙城の九州から都内へ進出、中古の大型賃貸マンションを獲得する。家主業として自社で物件を取得し賃料収入を売り上げにつなげる狙いで、首都圏での賃貸物件争奪戦はさらに激化していく。
JR東日本は7日、『生活サービス事業成長ビジョン』を発表した。生活関連サービス事業の売り上げを10年で8287億円から1兆2000億円に伸ばしていく。同ビジョンの中で、2026年までに賃貸住宅3000戸保有を目標に掲げた。沿線活性化のため、まちづくりに力を入れる方針で、事業の中でも住サービスの割合が不足していることから、賃貸住宅ビジネスの強化を打ち出した。子育て・介護・留学生の支援ができるコンセプト型賃貸住宅を開発していく。


グループのジェイアール東日本都市開発(同)では、18年の完成予定で、神奈川県川崎市新川崎にて、敷地内に保育園を誘致した60戸の賃貸住宅建設を進める。都内では三鷹駅徒歩3分に、病児や障がい者の子どもも預けられる保育園と住戸16戸の複合型賃貸マンションを来春完成予定だ。
ジェイアール東日本都市開発の冨樫伸夫常務は「複数の大学の留学生が住める国際シェアハウスの企画も検討している」と話す。グループで保有する土地の再開発や旧国鉄時代の社宅のリノベーションが中心だが、現在の保有戸数は約600戸にとどまる。目標達成のためには、年間250戸ペースでの取得や活用が必要で、営業社員が仕入れに駆け回る。
西日本旅客鉄道(大阪市)は、22年末に運輸事業以外の売り上げを4割まで高める。その中でも不動産事業をコアビジネスに据える。2月に菱重プロパティーズ(東京都港区)の株式70%を970億円で取得した。菱重プロパティーズは、約3000戸の賃貸住宅を保有。関東での保有不動産割合が41%で、住宅の割合は53%と過半数を占める。グループのJR西日本不動産開発の持つ360戸と合わせ保有物件は約3400戸に急拡大した。同社は「エリア外・沿線外の有望市場へも展開し、住宅分譲事業の拡大とともに安定した収益利益を確保するべく賃貸事業等の強化に取り組んでいる」と言う。
賃貸事業の勢いが止まらないのはJR九州だ。賃貸住宅シリーズ『RJR』の開発を始めたのは18年ほど前だが、3年前から事業を強化。九州での実績は2600戸にのぼる。100戸クラスの大型物件が中心で操車場跡地など、駅近くの土地を生かした立地が強みだ。
今年に入ってからは東京都北区に築42年、182戸の賃貸住宅を取得。港区芝浦では18年11月に完成予定で234戸の賃貸マンションを開発する。事業開発本部の児嶋真悟グループ長は「賃料の取れる都内で中古の100戸以上のスケールメリットの出る案件を進んで取得していく」と話す。
3社ともに運輸業での大幅な事業拡大が難しい中、家主業で賃料収入を積み上げ、収益を拡大していくのが狙い。首都圏の人口は5年で50万人以上増えており、安定した賃貸ニーズが見込める。
前述の児嶋グループ長は「長期保有が前提になるので利回り4%を目安に獲得を進めている」と語り、利回りが低めでも投資していくスタンスだ。資金力が潤沢な電鉄の参入で、投資用マンション開発会社は厳しい戦いを迫られることになる。

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