ずさん融資 氷山の一角

スルガ銀行(静岡県沼津市)は15日、2018年3月期の決算発表に合わせてシェアハウス投資の一連の問題について説明した。社内向けアンケートを実施した結果、通帳の偽造や改ざんが行われていたことを相当数の行員が認識していた可能性について認めた。18年3月末時点でシェアハウス案件の融資を受けているオーナーは1258人、融資残高は2035億87万円と発表。だが、本紙は独自の取材により、シェアハウス以外の融資にも改ざんが行われているケースの情報を入手。今回の不正は氷山の一角であり、一般の賃貸住宅にも広がる可能性がある。
スルガ銀行は危機管理委員会を設置し、500人の営業行員を対象に社内向けアンケートを実施した。その結果、通帳の偽造や改ざんの実施、さらに融資額を増やすために売買契約書とは別に売買金額を水増しした「銀行提出用」契約書の二重契約が行われていたことが判明。今後、行員の直接関与について、第三者委員会や金融庁の検査を踏まえて明らかにすると説明した。
スルガ銀行では女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ(破産手続き中)のオーナーに対して積極的に融資してきた。急先鋒として融資してきた横浜東口支店では営業行員と販売会社とが一体となり、金利7%以上のフリーローンを融資の条件とするセット販売を行ってきた。
だが、1月にスマートデイズはサブリース賃料の支払いが困難と発表し、オーナーから金利引き下げや期間限定の返済免除等のリスケジュールの相談が殺到。それに対しスルガ銀行は2月に「お客さまがご自身の責任でサブリース会社と締結していた。当社はご融資当初より一切関与していない」との内容を了承し、押印するようオーナーに求めていた。
今回の改ざん等が判明したことにより、事実に反する行為があったことについて本紙記者が指摘したところ「社内のコンセンサスを取らず、念書のような形でオーナーに送ってしまったが、誤りだった」と米山明広社長は謝罪した。
マンションでも不正
スルガ銀行の融資で問題化しているのはシェアハウスだけではない。建築会社ガヤルド(東京都千代田区)で賃貸住宅を建築する契約を結び、1回目の建築費の振り込み後、着工されないまま音信不通になった詐欺事件が本紙の取材で明らかになった。同事件についてもスルガ銀行が関与している。ガヤルドの全体被害はグループ会社内部資料によると40棟あり、そのうち不明な1件を除きすべてスルガ銀行の融資。
実際に被害を受けたオーナーがスルガ銀行から取り寄せた与信資料では、通帳の残高が105万円から3500万円に水増しされていたことが判明した。昨年5月27日にスルガ銀行川崎支店で、建築工事請負の契約と融資契約を締結。事前に販売会社に通帳残高のコピーを渡していたが、その数値が偽造されていた。担当行員はオーナー本人が目の前にいたのにもかかわらず、販売会社から通帳のコピーを与信資料の一つとして受け取っただけで通帳の原本を見ることはなかった。オーナーは「面談と言われて銀行に行くと、契約のお膳立てがすべてされており、矢継ぎ早に契約することになった」と話す。
その他にも、札幌で賃貸マンションの購入を予定していた東京のオーナーは、スルガ銀行と結託した不動産会社に通帳のコピーを偽造された。そのうえ金銭消費貸借契約書締結後にスルガ銀行から融資を拒否され、違約金を支払う羽目になったケースもある。現在、スルガ銀行と最高裁で係争中だという。


独自の基準「融資枠」
一連の通帳偽造や改ざんの背景には、スルガ銀行独自の「融資枠」がある。その融資枠とは、年収の20倍ほどまで不動産への融資を可能とする審査基準だ。「かぼちゃの馬車」のセミナー募集広告では対象者を「年収700万円以上」と明記していた。そのためスマートデイズがサブリースしていたオーナーには高所得のサラリーマンが目立つ。
だが、高所得だからといって必ずしも預金があるわけではない。スルガ銀行では「自己資金1割」を求めているが、シェアハウス1棟1億円前後の購入額の融資にあたって預金額不足で自己資金を用意できないオーナーが多かったから改ざんされたのだろう。だが、セミナー募集広告の中には「自己資金ゼロでもOK」という文字まで躍っていた。
 決算説明会では回収不能となった場合の損失に係る費用や貸出先の破綻による貸倒損失など実質与信費用は190億円の見通しと発表した。
 だが、前述の通りスルガ銀行によるずさんな融資は氷山の一角にすぎないだろう。

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