民泊新法の届け出伸びず

住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行が6月15日に迫る中、物件の届け出数が5月11日時点で724件と伸び悩んでいる。空室の新たな活用方法として期待されていた民泊だが、営業できる日数や地域を制限したルールが足かせとなり、高い収益を見込めないことが要因になっている。主要都市を中心に行った民泊に関する本紙取材では、届け出をしたのは個人事業者が多く目立った。管理会社は民泊新法ではなく、年間の営業日数制限がない特区民泊や簡易宿所、ホテルで宿泊事業参入を進めている。
観光庁が発表した5月11日時点の届け出数は全国で724件だった。本紙では主要都市の自治体に対し、15日付の民泊物件届け出数を取材。23区内で届け出数が多かったのは渋谷区51件、台東区23件、新宿区18件だ。いずれも外国人観光客に人気の高い宿泊エリアだが、民泊ポータルサイトのAirbnb(エアービーアンドビー)に掲載されている物件が各区300件以上あるのに比べて、かなり少ない。自治体では「違法民泊が減らないのではないか」と不安視する声もある。
取材ではすでに審査が完了し届け出番号を通知した件数のうち、事業者が個人か法人かを質問した。回答があったうちの大半が個人事業主のみだった。書類不備や消防署による現場確認に時間を要し、届け出があっても審査が完了していないケースも多いが、届け出の時点で個人の割合が圧倒的に多いようだ。
年間40件以上の旅館業法許可申請の実績を持つふじの行政書士事務所(東京都大田区)藤野慶和代表によると、届出件数が低調なのは、民泊新法と同日に改正旅館業法が施行されるためだという。改正後は最低客室数の基準が撤廃され、1室から旅館業が可能になる。加えてテレビ電話等を活用した本人確認を条件に、フロントを設置しないことも認めるなど構造設備の要件がかなり緩和される。
ただ改正した内容で旅館を運営するには、各自治体が条例を変更する必要がある。そのため、自治体条例の改正時期や自治体が独自に定める衛生基準の内容によって、民泊か旅館業か運営方法を判断したい考えもあるようだ。藤野代表は「営業できるエリアは変わらないが、ある程度の規模で宿泊事業を検討する場合は様子をうかがっている」と語る。


全国最多は札幌の69件
全国で最も届出件数が多かったのは札幌市の69件だ。同市を除く北海道内も44件と多い。
札幌市の民泊運営代行会社によると民泊で訪れるのは8割がマレーシアなどのアジア圏が中心。3~4泊が平均で、長くて1カ月半滞在するケースもあるという。
夏はレンタカーでラベンダー畑を見に、冬は降り積もる雪を体験するために訪れるなど、年間を通して観光需要がある。年間で最も利益を上げることができるのは、毎年2月上旬に開催される『さっぽろ雪まつり』の時期だ。さらに人気歌手グループのコンサート開催時も宿泊料金が高くても予約が入る。
北海道民泊観光協会(札幌市)の南邦彦代表理事は1年間、札幌市中央区の1Kで民泊を行い短期間で高い収益を上げた。雪まつりの時期だ。会場から徒歩圏内に位置する家賃3万5000円(年間賃料収入42万円)の部屋で、1週間で18万円の売り上げを達成。7、8月の繁忙期や人気歌手コンサートの時期なども高い宿泊料がとれる。
「札幌の民泊は繁忙期やイベント時を狙っていけば高い単価で宿泊料金が取れる。3万円の家賃で一年間満室稼働させるよりも、180日でも民泊ができれば十分な収益になる」(南代表理事)
首都圏に比べ地方の方が自治体の条例による民泊規制は厳しくない。地方では空室対策や収益向上として期待ができるかもしれない。

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