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収益不動産のインスペクション足踏み

 収益不動産の建物状況調査(以下、インスぺクション)が広がらない。2018年4月の宅地建物取引業法改正により、宅建業者は売買仲介時にインスペクションの制度説明や事業者あっせんの業務が必要になった。国は、インスぺクションの普及を進めたい考えだが、投資家の費用負担になるため実施は伸び悩む。だが、レオパレス(東京都中野区)のアパート施工不備で、物件の安全性が確実ではないことが示されている今、インスぺクションの必要性を考える時期に来ている
 18年の宅建業法改正では、インスぺクションに関して宅建業者に新たな業務が必要になった。大きく3点で、1点目は売買契約締結時に売主に対してインスぺクションの制度を説明し、要望があればインスぺクション事業者を紹介すること。2点目は、重要事項説明にインスぺクションの有無を記載し、調査済みの場合には、買主に調査内容を説明すること。3点目は売買契約締結時にインスぺクションの内容を理解しているか、売主、買主の双方に確認をとり、その旨を契約書に記載する点だ。(上図参照)
 国としては、宅建業者の制度説明や事業者のあっせんを通じ、インスぺクションの普及につなげるのが狙いだが、収益不動産での実施は増えていないのが実情のようだ。
 インスぺクションを行うさくら事務所(東京都渋谷区)では、18年4月から19年3月までの1年間で約2500件のインスぺクションを実施。そのうち、実需の住宅での依頼が95%を占め、アパートや賃貸マンションは5%とわずかだった。
 本紙が収益不動産の売買仲介を行う上場不動産会社(グループ会社含む)に対して行った独自調査では、


実質的な回答を得た7社のうち、仲介した収益不動産でインスぺクション済みの物件数が0件と回答したのは6社だった。対象とした不動産は18年4月~19年3月の期間に仲介を行った住居用の収益不動産。 各社にインスぺクション実施が広がらない理由を聞いたところ、2社が買主・売主双方が費用負担を嫌がる点を挙げた。
 実際、投資家にとって費用の問題が大きい。健美家(東京都港区)が運営する収益不動産ポータルサイト『健美家』は、4万5000件の収益不動産情報を掲載し、投資家会員は8万人超、利用する不動産会社は1500社に上るが、宅建業法改正からの1年間で「インスぺクション」に関する問い合わせはなかったという。費用の壁が普及を妨げている。同社の倉内敬一社長は「投資家のマインドとしてお金を出したくないというのが大きい」と指摘する。実需と違って収益不動産の場合、特に中古だと短・中期での売却を考えて取得する投資家もいる。その場合、インスぺクションの費用を出すことは事業性に響くと考えるからだという。
 他に不動産会社から上がったのは、「共同住宅での実施の意義として、空き部屋だけで全体の状況が判断できるのか。全部屋を調査するとなると賃借人の許可取得に手間がかかる」(香陵住販)
「不動産会社はインスペクションをしないことによるリスクをうまく説明できない場合がある」(プロパティエージェント)など普及のための課題は山積みだ。
 ただ、レオパレス21のアパート施工不備の問題が大きくクローズアップされる中、購入前に建物の状況を把握しておく重要度は増している。 前出のさくら事務所の長嶋修会長は「当社のインスぺクションで明らかになった施工不良は賃貸住宅が多い。オーナーの無関心が施工会社の怠慢を招いている状況もある」と話した。 同社がこれまで行ってきたインスぺクションの中で、施工不良が発見された賃貸住宅は、実需向けの住宅よりも3割ほど高い数字になっている。 買い手は、建物の保存状況などが未確認のままで、高額な収益不動産を購入するリスクを理解する必要がある。

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