ハウスパートナーホールディングス 千葉県松戸市 樋野伸太郎社長(39)
千葉県を中心に賃貸仲介1万4700件を誇るハウスパートナーホールディングス(以下、ハウスパートナー:千葉県松戸市)は、新たに東京電力グループの投資ファンドが株主となり、さらなる会社の成長を目指す。9月に就任した樋野伸太郎社長に、今後の会社の方向性などについて聞いた。
樋野伸太郎社長の下、新体制
「ハウスパートナーはポテンシャルのある会社。今後はさらに事業を拡大し、全国の大手と並ぶレベルまで成長できると考えている」
新たに社長に就任した樋野氏はこう話す。9月30日付で、東京電力グループの投資会社である東京電力タイムレスキャピタル(以下、東電TC：東京都千代田区)の組成したファンドが、ハウスパートナーの株式を取得し株主となった(保有比率と取得金額は非公開)
東電TCは5月に設立したばかりの会社で、ハウスパートナーは、同社の投資ファンドの出資先第1号だ。東電グループとしての不動産ビジネスへの期待の表れともいえそうだ。
M&Aで会社増やし売上45億円に伸長
今や千葉県内を中心に仲介店舗25店舗を展開し、地場最大手にまで成長を遂げたハウスパートナーは、2002年に設立。創業者で現会長の上野博史氏の事業承継に伴い、18年8月に香港の投資ファンドが資本参加した。
19年4月から社長を務めた石川智哉氏の指揮の下、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した業務の効率化を図ってきた。仲介店舗で行う物件確認業務や物件情報の更新業務などの自動化により月間340時間の業務を削減。21年1～8月までの1人あたりの残業時間は月間25.5時間で、19年の同時期と比べ、約14時間減少。会社が拡大する中でも従業員の業務負担削減を実現した。また、地元の不動産会社や修繕工事会社のM&Aを行い、成長を遂げてきた。
19年度のグループ売上高34億1100万円から、21年度は45億3100万円と売り上げは2年で32%増加した。
そんな石川氏からバトンを受け、さらなる飛躍を目指すのが樋野社長だ。「仲介、管理ともに順調に伸びてきているので、今の方針を引き継ぎ、年に少なくとも1～2店舗のペースで拠点を増やしていきたいと考えている」(樋野社長)
今後は、東京電力のネットワークを生かした施策も検討中だ。
アウトサイダーの目線を経営に生かす
樋野社長は、1982年生まれ。大学卒業後、2005年に大手監査法人トーマツ(同)に入社し4年間企業の会計業務に携わってきた。公認会計士の資格も持つ。09年には、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(同)でM&Aに関わってきた。
17年からは半官半民の地域経済活性化支援機構(旧、企業再生支援機構：同)で、地域の活性化に関する事業の支援に貢献してきた。畑の異なる水産業に飛び込み、養殖ビジネスの経営を軌道に乗せるため、業務工程や費用などを見直した。漁船に乗って養殖の現場を経験し、従業員と意見をぶつけ合いながらも説得し、オペレーションを大きく変えた。職人気質の世界にマーケットの目線を取り入れ事業の立て直しに成功したという。
その後、21年5月の東電TCの設立時にメンバーとして加わり現在に至る。不動産業界も門外漢だが「アウトサイダーだからこそ見えるものがあると考えている」(樋野社長)
これから会社を大きくする際にはガバナンス(企業統治)なども重要になってくる。また東電グループとの連携により企業価値の付加を模索していく。「机上だけでなく、現場の活動が数字に表れ、事業が動いていく感覚が好き」と語る樋野社長。
新たな経営陣の下でどのように会社を伸ばしていくのか、その手腕が試される。
(11月8日24面に掲載)
